―実写版セーラームーンを検証する―


Act.44:ヴィーナスvsマーズ編――

 

       本稿は、2004年8月14日(土)にTBS系列各局で朝7:30〜8:00に放送された、「美少女戦士セーラームーン」(実写版)第44話の感想記(DVD鑑賞レビュー)です。

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       前回のセーラー戦士達のバトル・シーンの再現から…

1.       …ジュピターが、『覚醒バージョン』集めた雷を地面に投げつけるように「ハッ!」と手を突いて『泥妖魔』に浴びせます……

2.       …マーズが、『覚醒バージョン』火炎放射で、こちらも『泥妖魔』「ハッ!」と焼いております……

3.       …ヴィーナスは、突然、「あ、……うっ…!」と貧血(?)でよろめき(←あれぇ?マーキュリーはぁ…?)…、それに気付いたにマーズがとっさに駆け寄り、ヴィーナスを抱き止めます…「だから言ったのよっ」。しかしヴィーナスは、すぐに気を持ち直すと、マーズを無視して振り切るようにし、尚も妖魔に向かって行きます。「ヴィーナスっ!」

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       その後、戦いを終えて変身を解いたセーラー戦士達…

4.       …美奈子が、ナニやら怖い顔をしております…。「あなたをリーダーとは認めない…。戦士の力に目覚めてないからよ…」「!……」。レイちゃんと美奈子が向かい合い、レイちゃんの後ろに亜美ちゃんとまこちゃんが立ってます(←ちなみに、亜美ちゃんがぬいぐるみルナを小脇に抱えております)…

5.       「…………」(←亜美ちゃんは、最初レイちゃんを見てましたが、そのあと視線を美奈子に移します…)(←事実を聞いた瞬間の顔が映されてないので、直後のリアクションは不明ですが、画面上は無表情です…)…

6.       「…………」(←次にアップで抜かれたまこちゃんも、事実を聞いた瞬間の顔が映されてないので、直後のリアクションは不明ですが、こちらは美奈子を見たままで、やはり画面上は無表情です…)…

       そうなのだ…。前回のバトル・シーンの中で、なぜマーキュリーだけが、単独で『泥妖魔』を1匹も倒せてなかったのか?それは、「幻の銀水晶」「クイン・メタリア」の影響で『泥妖魔』も格段に強くなってきており、もはやセーラー戦士は、各々が覚醒パワーを使わなければ単独では倒せないほどになっているからなのである。だから、もはやマーキュリーは単独で『泥妖魔』を倒すには至らず、前回は、極めて守備的に戦っていました。つまり、Act.29の『マーキュリー覚醒』の時にも説明した通り、マーキュリーに必要とされてる「戦士の力」が、初めから『攻撃力の強化』にはなかったからなんですね。でも、もちろんマーキュリーは精神力が強化されているし、単独行動もしないから、それはそれで全く問題はない訳です(←もしもそれがなかったら、Act.42での『対・メタリア妖魔U戦』では、腕の怪我どころでは済まなかったに違いない)。つまり、問題はヴィーナスなのだ。もはや覚醒パワーなしには『泥妖魔』さえ倒せないと言う状況になっている今、それでも美奈子が、依然として単独行動を続けようとする限り、レイちゃんは、『もうこれ以上ヴィーナスをサポートする事は不可能だ』と判断したんですね。なぜなら、今回のようにみんなと一緒に戦ってる時はいいけれど、もしも美奈子が一人で妖魔と戦う羽目にでもなったら、もう一貫の終わりだからです。

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       で、ここから今回のエピソードに入ります…。

       「あたしが戦士の力に目覚めてない?言いがかりはやめて!」「言いがかりかどうか、…自分が一番わかってるんじゃない?」「レイ、ちょっと!」。レイちゃんはまこちゃんを制止するように遮り、「まことと亜美ちゃんだって…納得できないでしょ?…戦士の力に目覚めてないのに……リーダーだなんて…!」「でも、美奈子ちゃんは、一番前世の記憶を持ってるし…」ぬいぐるみルナ:「そうよ、それは間違いないわ…『それだけって気もしないでもないけど…』(←困ったバージョン)

       亜美ちゃんは、Act.35でも、全く同じ事をレイちゃんに言って、ナンとなしに美奈子をフォローしてるんですね(↓)

―Act.35の再現VTR―

       「あたし、ずっと気になってたんだけど、ヴィーナスとアルテミスが、地場衛とうさぎちゃんを認めるわけないと思うの」「…そうかなぁ…」「ヴィーナスは厳しいから…」

       「そうね…。でも、どうしてヴィーナスはあんなに戦士でいようとするのかしら?」。レイちゃんが、亜美ちゃんに向かってそう言うと、亜美ちゃんはすかさず、「たぶん、一番前世の記憶を持ってるから…」

       「…………そうなんだけど…」(←目を伏せてしまう)。「…………『レイちゃんは、ナニか他に引っかかるコトでもあるのかしら…』(←みたいにレイちゃんを見つめ続ける)。

       亜美ちゃんは、純粋に、ただレイちゃんと美奈子に仲良くして欲しいだけなんでしょうなぁ…。亜美ちゃん自身は、仮に美奈子個人には特別な感情はないとしても、『うさぎちゃんの大好きな美奈子ちゃんだから…』と言う気持ちは大切にしたいはずで、だから亜美ちゃんはここで、うさぎちゃんと同じように美奈子のコトを「美奈子ちゃん」と呼んでるんでしょうからね。それに、亜美ちゃん自身も、もはやかつての自分とは違って、天敵「大阪さん」との反目を乗り越えて一皮向けたばかりですから、以前よりもずっと心が広くなってますしね。

       「……『フッ、いい部下を持ったわ…』、アルテミィ〜ス?(←おおっ! 久々に正式名称が出たっ!)、あたしが戦士の力に目覚めてるって、マーズに言ってやって!」「…あ…うぅん…」「アルテミィ〜スっ!」「…んんあ゛っ、あ…美奈子は、ちゃんと目覚めてるよ…んん目が、覚めてるって言うか…」「意味わかんないコト言わないで!『マジで殴るわよ!』……どう?!」

       「…フッ……アルテミスも困ってるじゃない…」『発音が違うわっ! アルテミィ〜スよっ!』…とにかく、あたしがリーダーなのは前世から決まってるの! 使命を果たすために」「前世のために戦ってるんじゃないわ…『それにあなたがリーダーって誰が決めたのよ?! 前世の斉藤社長?』…戦士の力に目覚めるまで、戦いには来ないで…『ぶっちゃけ足手まとい?』…その間に、やることはあるでしょ?」(←これは『手術しろ』って意味ですな…)。

       「レイ! いい加減にしなよっ、もし戦士の力に目覚めてなくたって、仲間ってことには変わりないだろ!」「仲間だったら…、…………ウソはつかないわ…『だから仲間とも認めない』(←まこちゃんのフォローには、亜美ちゃんと違ってナンの理論的根拠もないので、いまいち説得力に欠けます。なので、レイちゃんは間髪入れずにあっさりと反論してのけます)。

       レイちゃんは、亜美ちゃんの言葉には一切リアクションしなかったのに、まこちゃんの言葉に対しては二度ともリアクションしてますね。ここでレイちゃんは、明らかにまこちゃんに対しても、遠回しに、『まこと、あなたも他人事じゃないのよ』ってニュアンスを含ませてるんですね。

       「!!…『ナニよっ、みんなだって隠し事ばっかしてたくせに…!』

       「…………」(←まこちゃんは、ずっとレイちゃんを見つめ続けています…)。

       誰よりも『仲間意識』の強いまこちゃんは、もちろん『前世組』なので、その『党首』であるリーダー美奈子を「仲間」と認めないレイちゃんに対して、明らかに疑念を抱いてるようですねぇ…。

       「…………」(←逆に亜美ちゃんは、ずっと美奈子の顔を見つめ続けています…)。

       現時点で、実は誰よりも大人だったりしてる亜美ちゃんは、表向きの立場は中立を保ちますが、心情的にはレイちゃん派、つまり『現世組』なので、美奈子がなぜ「うそ」をついてるのか、その真意が気になってるんじゃないでしょうか…。

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       さて、以前にも書きましたが、美奈子が実は「戦士の力に目覚めてない」と言う問題は、すでにAct.31の『ジュピター覚醒』の際に告白されていたんですね(↓)

―Act.31の再現VTR―

       こちらは愛野邸…

       学校から帰宅したらしき制服姿の美奈子が、学生カバンをソファの上に置き、電子オルガンの上にいるアルテミィ〜スのところに行きます。「ルナからぁ、ジュピターの力の目覚めがまだうまくいかないと、連絡があった」。美奈子はイスに腰掛け、「確かに遅いけど…、でもきっと目覚める。そのために前世を持って生まれてきたんだから……あたしも…」

       確かにこの表現は、いかにも実写版的なレトリックに溢れていますが、今にして冷静に分析すれば、この最後の「あたしも」と言う一言は、文法的に考えても「前世を持って生まれてきた」には掛からず、「きっと目覚める」の方にしか掛かってません。それなのに、それがそう言う風に聞こえなかったのは、完全に先入観のなせる業ですね。つまり、見てる我々が、まさかヴィーナスが「戦士の力に目覚めてない」などとは、考えてもいなかったからなんです。なぜなら、ヴィーナスはAct.12で「プリンセス・セーラーヴィーナス様」として登場した時、四天王の一人であるゾイサイトを秒殺し、それに対してベリル様も、「ゾイサイトが倒れるとは、さすがプリンセスと言うべきか…と言ってた位ですから、前世の記憶のあるヴィーナスは、当然最初から「戦士の力」にも目覚めていて、だから他の4人よりも強いのだと、何となく、印象としてそのように思い込まされていたからなんです。その後、病気のせいと、他のみんなも強くなったせいで、ヴィーナス一人が特に強いと感じる場面はありませんでしたが、それでも、Act.28やAct.35ではあのクンツァイトと互角に戦ってたりもしてましたから、『体調さえ良ければ、やはりヴィーナスが一番強いのでは?』と思わせるだけのモノはあった訳です。

       で、美奈子が「戦士の力に目覚めてない」と言う問題が再び「公(おおやけ)」にされるのは、Act.40なのですが、そのシーンはDVD第10巻の「未使用シーン」に回されてしまいます(↓)

―Act.40の再現VTR―

       前回のラストシーンで、「もう…、歌は辞める…」とアルテミィ〜スに打ち明けた美奈子…。「あたしに残った時間、どんどん少なくなってる…。もう、余計なことに使ってる余裕ないよ」「ち、ち、ちょっと待ってくれっ、君にはセーラーヴィーナスじゃない、愛野美奈子としての時間は持って欲しいんだ」「…どうして?!」「あ、……どうしてってぇ…」「…前世の使命を果たすために生まれてきたんだから…そのために生きなきゃ…。セーラーヴィーナスじゃないあたしなんか、いないんだよ?」

       ※ 以下は、DVD第10巻収録の「未使用シーン」(↓)

1.         「セーラーヴィーナスじゃない私なんか、いないんだよ?」「ぼくはそう思わない」

2.         美奈子は首を横に振り、「アルテミスだって、ずっと気にしてたはずよ。どうしてリーダーのあたしが、戦士の力に目覚めてないのか…って…」「それは…」

3.         「病気のせいじゃない…。きっと……歌のせい…」

4.         ここで美奈子はソファから立ち上がり、窓の方へ行きます。

       ※ このAct.40が収録されてる「美少女戦士セーラームーン DVD 第10巻」の発売日は2004/12/23なので、すでに本放送が終了した後です(←最終回の放送日は2004/9/25)。

       つまり、実写版をリアル・タイムで見ていた人には、そもそも美奈子が「戦士の力に目覚めてない」と言う事実すら気付かなかったため、今回Act.43と44のこのシーンで、なぜいきなりレイちゃんが、美奈子が「戦士の力に目覚めてない」と知ってたのか?と言う理由は、その具体的な根拠を想像する材料が一切ありませんでした(←確かに、前回のバトル・シーンにおいて、マーズとジュピターが覚醒パワーを使って『泥妖魔』を倒してるのに、ヴィーナスだけそれらしい技を使ってないと言う「ほのめかし」はありましたが…)。ただし、DVD鑑賞による「未使用シーン」込みの場合だと、今回のこのアルテミィ〜スのうろたえ振りから察して、「ひょっとしたら、彼が密かにレイちゃんにバラしていたのか?」と疑うコトぐらいはできましょうか…(←て言うか、ワシがそうでした…)。

       いずれにせよ、ここで重要なのは、レイちゃんの取った言動の意味です。レイちゃんは、とにかく美奈子に手術を受けさせたいんですね。そのために、彼女を戦線離脱させようとして、敢えてみんなの前で美奈子が「戦士の力に目覚めてない」とバラし、それを根拠に「リーダー」の資格も剥奪しようとしたんです。なぜなら、『それでも美奈子は「リーダー」である』と言うような大義名分を残してしまうと、少なくとも指揮官としてだけなら戦場に留まり得る可能性を与えてしまうからです(←実際、前回の戦闘シーンでも、的確な指示を出してチームを統率してはいましたからね)。だから、まこちゃんの言う「仲間ってことには変わりない」も、当然「認めない」訳です。

       レイちゃんは、ここまで言うのなら、いっそのコト、美奈子の病気の事をみんなにバラしてしまえば良いのでは?とも思うのですが、それはしませんでしたね。そうすれば、こんな風に自分一人が悪者になるような真似をせずとも、極めて平和的な多数決で無理やり美奈子を故障者リストに載せ、簡単に戦線離脱させる事だってできたはずです。しかしそれでは、美奈子はみんなから不要扱いされる事にもなり、完全にプライドがズタズタにされてしまいます。なのでレイちゃんは、みんなから強いられて手術するのではなく、あくまでも美奈子本人に手術の決断をさせる猶予を与えたかったんです。だからレイちゃんは、いつもなら感情的にやり合ってしまうところなのに、逆に、終始、不気味なほどに冷静さを失う事なく、自分の感情を押し殺して、この場を演じ切ってみせたんですね。それに、病気に関しては直接美奈子から告白されてますから、レイちゃんは、それに関しては約束を守って、絶対に自分からは口を割らないつもりなんです。しかし、「戦士の力に目覚めてない」コトに関しては、美奈子から直接告白されてませんから、それに関しては何の約束もしてないので、秘密にしてやる義理などどこにもない訳です。レイちゃんは筋を通す人なんですな。なので、美奈子は、病気だけでなく、「戦士の力に目覚めてない」事も包み隠さずレイちゃんに告白してれば、こんな逆襲を食らう事もなかったんです。

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       「♪じゃ〜ん…ひとみは〜いつ〜も〜ジュ〜エル〜(ジュ〜エル〜)…♪」(←ここでオープニングです)

 

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       オープニング開けは、ダーク・キングダム『エンディミオンの部屋』…。

       地場衛が、胸を押さえて痛みを堪えながら、今にも倒れそうな足取りで部屋に帰って来ました…かなり苦しそうです。地場衛はばたっ!と床に手を着きます。そこへゾイサイトが「マスター!!」と駆けつけて来て、地場衛を助け起こし、肩を貸してベッドまで運びます…「なぜ形だけでも、ベリルに従わなかったんです…」。地場衛は倒れ込むようにベッドに仰向けになり、苦しんでいるだけで答えません。「…このままでは…命が…」

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       一方、こちらは、茫然自失のベリル様…。

       前回、エンディミオンにフラレちゃった時のコトを思い出しながら、ナンか、えらくフツーに黄昏ちゃっておりますが…

       「戻ったならば、お前に埋め込んだ石を消してやろう…。必ず陽が沈むまでに戻って来るのだ、何があろうと…」

       …セーラームーンとエンディミオンが、砂浜でチューしてるトコなんかも思い出しております…(←どうせなら、こん時に石を復活させちゃえば良かったんじゃ…)…

       …そして、陽が沈んでいきます…

       「…どうやってもエンディミオンの心は手に入らぬ…。…あの頃のように…

       …で、今度は、前世のプリンセスとエンディミオンが前世の『地球国の宮殿』の外でチューしております…(←コッチのチューは、Act.36で出てきた回想シーンです)…。それを『前世のベリル』が覗き見して、さも口惜しそうに『キィ〜っ!』となって背を向けます…

       「…やはり命を!…」。するとベリル様は、さっきまでは誰もいなかったのに、いつの間にか後ろに控えて片ひざを着いていたジェダイトくんに気付いて振り向きます…「ジェダイト…別に用はないぞ…」「…ベリル様をお慰めしたく…。…ただ…私にはお側にいることぐらいしかできません…。…お目障りなら消えます…」。ベリル様は、「…かまわぬ…『どうせ、いてもいなくても一緒だし…』と言うと、ジェダイトくんに背を向けます。

       このシーンでのジェダイトくんは、ちょっとアレですねぇ…。本来であれば彼は、ベリル様がエンディミオンにフラレたら、それはそれは、もう諸手を挙げて大喜びのはずです。これでベリル様がエンディミオンのコトを諦めてくれれば、自分にチャンスが回ってくる可能性だって出てくる訳ですからね。そう言う下心があればこそ、かつてのあるじであるマスターに「命を吸い取られる石」を埋め込み、恋敵を亡き者にしようとするような真似すらできた訳です。ところが、このシーンでのジェダイトくんには、そのような計算や下心など微塵もありません。ただ純粋に、ベリル様の悲しみに対して、自分も同じように心を痛めてるんですな…。つまり彼は、前回ゾイサイトに「自分のした事が分かっているのか! マスターはお前のあるじだぞ!」と詰め寄られた時、「今は違うっ! オレのあるじはベリル様だっ…。そう決めたっ!」と言ってましたが、その意味は、『たとえベリル様のお心が誰に向いていたとしても、オレは無償の愛に生きるのだ』と、そう心に決めていて、この期に及んでも尚、それを貫き通そうとしてるんですな…。

       とそこへ、突然ゾイサイトがやって来ました…。それを見てジェダイトくんは、「ゾイサイト!?…『今いいトコなんだから邪魔すんなよっ!』。ゾイサイトは、そんなジェダイトくんを蔑むように睨みつけ、「……『フンッ、童貞野郎はすっこんでろっ!』とベリル様の前に出ると、「クイン・ベリル…!」と呼びかけます。

       ベリル様が振り向くと、「…どうか、マスターを助けて頂きたい。私の命など代わりになるはずないが、聞き届けてもらえるならば…」「…死んでも良いと申すか?」「それで済むなら、喜んで…!」「わらわにはそのような忠誠心、一度も見せた事のないお前がな…」「クイン・ベリル!!」「プリンセスの命…それと引き替えなら、考えても良い…『て言うか、元々それがお前の仕事だろ?いつまでサボってんだよ…』「…………『だって、個人的にヴィーナスがプリンセスの方が良かったんだもん…そうすりゃ今頃、私が新しい地球の王子(←名付けて、ゾイディミオン)に…』

       ベリル様は、まだまだ諦めませんねぇ…。しかしここでは、「考えても良い…」と、極めてあいまいな言い方をしましたね…。おそらくこれは、ゾイサイトごときにあのプリンセスを殺せるはずがないと思ってるんでしょうな…。なぜなら、Act.36では、ベリル様ですらプリンセス・セーラームーンには歯が立たず、Act.38では、「プリンセスの力とメタリアの力は同じ」とも言っており、相手がメタリア級とあっちゃ、もはや実力行使では完全に白旗状態ですからね(←なので、ダーク・キングダムからは、もはやエンディミオンを刺客に送る以外、ほとんど何もしてません)。しかも、ダーク・キングダム・サイドでは、あの『メタリア妖魔』とセーラー戦士の一連の攻防については全く干渉して来ませんから、ベリル様にも、あの『メタリア妖魔U』を刺客として操る術はないようですし…。とにかく、いい悪いは別にして、「エンディミオンがいない星はいらない」とまで言い切ってしまえるプリンセスと、「権力も、富も、幸せ、美しさ…、欲望を満たす全て」を手に入れようとするベリル様とでは、エンディミオンに対する愛情自体に、すでに決定的な差があるんですな(←「二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ず」とは、よく言ったものです…)。

        ★  ★  ★  ★  

       日付変わって、月野邸にて…。

       まだ明るい昼間の時間帯です…(←ワシが思うに、多分うさぎちゃんは、出かけるためにクローゼットの方で着替えをしながら、昨夜の一件をぬいぐるみルナに説明していたものと思われます…)。で、うさぎちゃんがテーブルの方に戻って来ると、ベッドの上のぬいぐるみルナが、「そう…地場衛と会ったの…」(←ノーマル・バージョン)と言います。

       うさぎちゃんはテーブルの前に腰を下ろし、テーブルの上に置いてあったクマさん(?)のぬいぐるみを手にしながら、「…うん…、また敵の所に戻っちゃったけど、でも、会えてよかった…」…そう言うと、前回のシーンを回想します…(↓)

      エンディミオンが海を見ながら、「安心しろ、オレの気持ちが、お前から離れることはないから…」、エンディミオンはセーラームーンの方に向き直り、「…心はいつまでも…お前と一緒だ…」

       うさぎちゃんは、それを思い出しながら、ナニやらうっとりとした表情を浮かべておりますが、その微笑みは、どことなく…「…………」

       「今日は、どこに行くの?」「なるちゃんのお見舞い…。…ルナも…行く?」「うぅん…、あたしは…」「…ふぅん…」。うさぎちゃんは、まるで、昨夜地場衛に、「どんな時でも笑ってればいいんだ…バカみたいにな…、フッ、得意だろ?」と言われたその言葉に従おうと意識してるかのような、そんな表情を作り続けてるかのようです…。「…(心の声→)よかったわぁ…、今日のクラウンは、ちょっと荒れそうだから…」(←どうやら、こちらはこちらで、昨夜の一件を受けてのミーティングがあるようですな…)。

        ★  ★  ★  ★  

       クラウンの受付にて…。

       おや?今日は受付のカウンターの中に、ネフリンが一人で立ってますね(←お会計とかも、一人でできるようになったのか?)。ネフリンは、ナニやら真顔で自分の右手をじっと見つめております…「…………あの時…」。ここで、前々回Act.42の回想シーンが入ります…(↓)

       …クラウンの受付の前で床のモップがけをしていたネフリンが、急に「!」と何かを感じて顔を上げます。それから、ワナワナと自分の手のひらを見つめ(←この時は左手)、「…この力は!」と叫びます…

       「…やはりナニかが違う…。力が戻ったのか!?…」。するとネフリンは目を閉じ、右手を前にかざすと、気を溜めるように意識を集中させます…。すると、突然辺りが光に包まれ……

        ★  ★  ★  ★  

       そんなところへ、亜美ちゃんのご来店です…。

       入り口の自動ドアがうぃーん…と開いて亜美ちゃんが入って来ると…「!!……」。見ると、受付の前の床には、カラオケ盛り上げグッズだのビールケースだのナンだのが所狭しと散乱していて、めちゃくちゃに荒らされております。カウンターの上には、さっきまではきれいに片付けられていたのに、例の『まこちゃんマフラー』を巻いたカメのぬいぐるみだのナンだのが散乱しております…。

       そして、ネフリンが自分の右手の手首を押さえながら、呆然と立ち尽くしております…「……」。亜美ちゃんがネフリンに、「どうしたんですか?」と聞くと、ネフリンは顔を上げ、亜美ちゃんを見ると…「…!…」…ナニか気まずそうに、すぐに目をそらします…。

       て言うかその前に…、あ…、あ…、亜美ちゃんが…、亜美ちゃんが髪型を変えたっ!(←レイちゃんみたいなセミロングになってるっ!)。

       そこへ、元基が奥から出て来て、「亜美ちゃーん、またコイツがやってくれちゃったみたいで…」。元基はあきれたように、グッズをビールケースの上に無造作に置くと、「でもホント、ナニすればこうなるわけ!?」「わからんっ!」「わからんっ!…てさあ、またバイト代から引かれるよ?! つーかマイナスだよ?」「……」「はぁ、オレも連帯責任だし…」(←でも…、Act.13でカメキチが失踪した時のキミの家捜しの方が、よっぽどひどかったように思うよ…)。

       どうやらネフリンが、四天王時代の力が戻ってるかどうか試そうとして、ナンか技を使ってみちゃったみたいですな…(←でも、時と場所ぐらい考えようね…)。

       元基がカウンターに頬杖をついてうなだれていると、亜美ちゃんは元基に「あのぉ…」と声をかけ、手に持ってた紙袋の口を開いて、「良ければこれ…、私が作ったんだけど…気分直しに…」と差し出します。

       元基:「うそっ!…ありがとう!…いた!?」かーんっ!(←見ると中には、所々黒く焦げたクッキーが…)「…だきます…」「♪…『えへっ、ちょっと失敗しちゃったの♪』(←みたいな…)。

       しかしコレはどう言うコトだ?! 亜美ちゃんはクッキーをちゃんと作れるはずだぞ?! なぜなら亜美ちゃんは、Act.16の家庭科の授業で完璧なクッキーを作っており、それを嬉しそうに「ママへ」あげようとしてたし、それをなるちゃんもうさぎちゃんも食べたがってたじゃないか。あの時亜美ちゃんが作ったクッキーは、画面上でちゃんと確認する事ができるが、チョコチップ入りで、もちろん焦げてなんかいなかった。それに、Act.41でも見た通り、亜美ちゃんの通信簿は「技術・家庭科」も含めてオール5のオールAで「いつも通り」なのだから、亜美ちゃんは特に料理が苦手なはずもない(←もちろんまこちゃんほど『得意』ではないとしても、授業でやるような基本的な事ぐらいは完璧なのだ)。…と言うコトはだ…ワシの仮説(←て言うか、いつもの妄想)によれば…(↓)

1.       今日のクラウン・ミーティングは、さっきルナも言ってたように、「今日のクラウンは、ちょっと荒れそうだから…」と予想されていたため、亜美ちゃんはそれが気になって、ちょっと考え事をしながらクッキーを作ってたので、ついうっかりしてオーブンの時間設定を間違え、クッキーを焦がしてしまった…。

2.       普段そんな失敗なんかしたコトないので、自分でも笑ってしまい、いっそのコト、笑い話のつもりでみんなに見せようと思って、敢えてそのままクラウンに持って来た…。

3.       それでいざクラウンへやって来たら、受付でネフリンと元基が、まさに打って付けのどんよりムードでいたため、ここで試しに「気分直しに」と、『失敗クッキー』の反応を見てみようと差し出してみた…。

       元基はクッキーを手に取ったものの、しばし口に運ぶのを躊躇しちゃってます…。その間、ネフリンは相変わらず自分の手のひらを見つめたままで、二人のやり取りを全く見てません…。

       亜美ちゃんは、すぐにネフリンにも袋を差し出します…。すると、ネフリンは『ハッ』としたように一度袋を見ますが、すぐに目をそらし、顔を背けます…「……『また憐れみをかけようと言うのか…』

       でも亜美ちゃんは、ひるむコトなく笑顔で「どうぞっ!」と勧めます。するとネフリンは、袋を見るとも見ないともしながら、手を中に入れ、クッキーを一枚取り出します…。

       一方の元基は、「うん…、けっこう…おいしい♪…『焦げてる割には…』などと、お世辞らしきコトを言っておりますが…。亜美ちゃんも、それに笑顔で応えております…。

       一方のネフリンは、「……『ナンだこの食い物は?…生まれて初めて見るな…』みたいに、焦げたクッキーをしげしげと眺めたあと、試しに一口食べてみると…「…!…『ンンっ!?ナンだコレは?!…めちゃめちゃうまいじゃないかっ…』みたいな顔をしたかと思うと、いきなり「ま…、マズイ……」と言い出します。

       それを聞いて亜美ちゃんは一瞬笑顔が消え、『え?』みたいにネフリンの方に向き直りますが、ネフリンはクッキーを一枚丸々口に頬張ったまま、「マズイ…!」と言って袋に手を突っ込み、もう一枚取り出して食べ始め、また「マズイ…!」と言ってもう片方の手にももう一枚取り出して、貪るように食べております(←まるで、『敵の作ったモノなど死んでも褒めんぞ、だが、こりゃ食いだしたら止まらんっ!』みたいな…)。

       そんなネフリンを見て、元基が顔をしかめながら、「…お前さぁ…『お客さんからもらっといて「マズイ」はないでしょ…』みたいに言うと、ネフリンは「ナンだっ!」と突っかかりますが、でも、亜美ちゃんは、そんなネフリンが、ナンだか分からないけど可笑しくて、「うふっ、あははは…♪」と素直に笑っちゃってます。

       そんな風に笑う亜美ちゃんを初めて見て、ネフリンは、急に、自分の中にナニかが芽生えるのを感じたかのように、クラウンに来てから初めて、亜美ちゃんの顔をハッキリと正視します…「……『なぜだ…今日は、こやつがあの時のマーキュリーとダブらず、自分を無様にも感じない…』

       そのあとも亜美ちゃんは笑い続けてますが、ネフリンは、少しうつむき加減に考え込みながら、ぼそっとクッキーを口にします…「……」

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       ところが、そんな楽しいひと時を、一瞬にして凍りつかせるようなご来客が…。

       入り口の自動ドアがうぃーん…と開くと、一人の女の子が、キャップを深々と被って顔を伏せながら入って来ました。元基が「いらっしゃいませ…」と言うと、彼女は無言で『年間パスポート』を見せます。亜美ちゃんが振り返って見ると「!!…」。ナンと! あの愛野美奈子が、ついにクラウンにやって来ました! 美奈子はそのまま黙って受付を素通りして行きます。元基:「えっ!?……今の、って…!」(←カラオケ・クラウン開店以来、初の芸能人のお目見えに、そりゃもう元基もびっくりです!)。

        ★  ★  ★  ★  

       で、その頃ルナカラでは…。

       ルナの予想通り、先に来ていたレイちゃんとまこちゃんが口論しております。まこちゃんはばんっ!とテーブルを叩き、「どうしてそんなに前世を嫌がるわけ?あたしたちには前世があるのは確かだろ!」「だからって、それにとらわれるコトはないわ」「とらわれてなんかないよっ」「じゃあ元基くんのコトは?! 一人でいい、なんてとらわれてる証拠じゃないっ」「違うって!…それはぁ…つまり……」「つまり…?」「前世を受け入れてるんだよっ…」

       実は、これとほとんど同じコトを、Act.41の児童館で、うさぎちゃんとまこちゃんが話してるんですね(↓)

―Act.41の再現VTR―

       まこちゃんとうさぎちゃんが、着ぐるみを脱いでエプロン姿に戻り、洗濯物を干しております。「やっぱりまこちゃんと元基くん、お似合いなんだもんっ」「勝手に決めるな」「亜美ちゃんだって応援してるよ?まこちゃんが一人でいいって言ってたの、気になってるって言うか…」「でもそれは前世から決まってたコトだから…。あたしはそれですごいスッキリしたし…」「だから元基くんとも付き合わないわけ?」「元基くんのコトは別に好きってわけじゃ…。それに元基くんだって、もうナンとも思ってないよ…」「うぅんっ、気になってるね! 二人とも! こういうコトは、今私の方が先輩って言うか♪」「ありえない」「ありえるって! 一人でいいなんて、まこちゃんだって思ってるはずないよ!」「…………」「…?」

       ところが、この時まこちゃんは、「元基くんだって、もうナンとも思ってないよ」と思ってたその元基から、このあと、遠回しながらまた告白されちゃうんですよね…。でも結局、『泥妖魔』が出て来ちゃったおかげで、その元基の目の前で変身してちゃって、それを口実にまたフッてしまった訳なのですが、まこちゃんは、うさぎちゃんに対しては「元基くんのコトは別に好きってわけじゃ…」と言ってたのに、今回のレイちゃんに対しては、「違うって!…それはぁ…つまり……」と、元基に対する感情を否定する言葉に詰まってるんですな…。つまりまこちゃんは、Act.31で一度フッたはずの元基が、まだ自分のコトを好きでいてくれたと言う事実を知って、またナニかが変わっていたんです…つまり、そんな元基に対して、自分も好意を持ち始めているコトを、レイちゃんとの口論の中で、半ば認めた訳です。だから最終的に、「前世を受け入れてるんだよっ」と言う強引な一言でしか、言い返せなくなってるんですね。

       するとそこへ、「その通りよっ!」と美奈子が割って入るように、ついにルナカラ初見参ですっ!

       レイちゃんは思わず後ろを振り返り、「……!?」。まこちゃんは目を丸くして見上げます…「……!…」

       美奈子は帽子のツバを上げて顔を見せると、レイちゃんを見据えるような眼差しで見下ろしながら、ゆっくりと階段を下りて来ます(←BGMは、なぜかヴィーナスの変身のテーマ♪…ちなみに、この曲は「DJムーン2」に収録されておりますが、なぜかトラック10の「ダークキングダムの四従士」と言うタイトルの曲の頭に組み込まれてしまっております…)(←ってンなバカなっ!)。

 

       すると、美奈子のあとから亜美ちゃんが慌てて駆け込んで来て、「!!…」(←クッキーの袋を持ってませんな…)(←あまりの好評ぶりに、結局ネフリンに全部あげて来ちゃったんですな)。

       さらにそのすぐあとに、人型ルナがアルテミィ〜スを小脇に抱えて飛び込んで来て、「やっぱり…!」(←どうやらルナは、レイちゃんとまこちゃんの口論よりも、美奈子の乱入の方を心配してたようですな…)。「…ボクは、止めたんだが……」(←て言うか、キミって完全に美奈子の尻に敷かれてるよね?)。

       美奈子がレイちゃんの前まで来ると、レイちゃんはイスから立ち上がり、二人はさっそくガンの飛ばし合いです…「……」「……」(←いいぞ〜っ、どっちも負けるな〜っ!)。

 

 ★  ★  ★  ★   CMタイム― ★  ★  ★  ★  

 

       場面変わって、こちらはうさぎちゃん…。

       うさぎちゃんはなるちゃんのお見舞いに病院へやって来ました。病室のドアをゆっくり開けると、ベッドの上には、なるちゃんが仰向けに寝てて、しかも目を見開いたまま無表情で、まさに「抜け殻」のようになっています。うさぎちゃんは、なるちゃんの傍らに立つと、枕元にそっと、茶色いクマさんのぬいぐるみを置きます…(←さっき部屋のテーブルの上に置いてあったやつですね)。

       うさぎちゃんは、じっとなるちゃんの顔を見つめてますが、心の中では、なるちゃんが嬉しそうに「うさぎっ♪」と起き上がる様子を思い浮かべてます。でも、実際のなるちゃんは、まるでマネキン人形のように、ピクリとも動きません…。「…………なるちゃん……」

        ★  ★  ★  ★  

       ダーク・キングダムにて…。

       洞窟の通路を、ゾイサイトがうつむきながらトボトボと歩いて来ました…。ゾイサイトはふと立ち止まると顔を上げ、「プリンセスの命…か…」とつぶやきます…。するとそこへ、クンツァイトがやって来ました…「ゾイサイト、…私はダーク・キングダムを出るぞ…」「ナニィ!?」「ベリルの気が散っている今がチャンスだ。私はヤツの呪縛を解く…」「本気か?」「イチかバチか…命が尽きればそれまでだ…」。そう言ってクンツァイトが行き過ぎようとすると、ゾイサイトは呼び止めるように「復讐のためか!?」。クンツァイトは立ち止まり、「……私にはそれしかない…」と言って去って行きました。「……マスターを守れるのは…、やはり私一人か…」

       その頃、地場衛は、ベッドの上で静かに眠っております…(←くれぐれも、うさぎちゃんの夢を見ないようにね…)。

       ゾイサイトとクンツァイトは、前々回Act.42で、以下のようなやり取りをしてました…(↓)

―Act.42の再現VTR―

       こちらは『ダーク・キングダムの森』…。

       クンツァイトが、一人で剣の稽古をしております…。するとそこへ、ゾイサイトがやって来ました…。クンツァイト:「なんだ?」。ゾイサイト:「ジェダイトが結局、ベリルについた…」「ヤツは素直だからな…ベリルの呪縛も面白いようにかかる…」「お前もその呪縛を解くつもりはないのか? 私一人でマスターを守るのは…無理だ…」「私の呪縛だと…?」「マスターと、星を滅ぼした者への復讐という、呪縛だ」「呪縛ではないっ、私の意志だ」「ならば何故、今すぐにマスターの命を奪わない? お前の中に本当のお前が目覚めているからではないのか?!」。するとクンツァイトは、さっ!とゾイサイトに剣を向けます…

       ゾイサイトがクンツァイトに望んでいたのは、「マスターと、星を滅ぼした者への復讐という呪縛」を解き、二人で協力して「マスターを守る」事です。一方クンツァイトは、マスター一人だけを復讐の対象にしてる訳ではありません。彼はAct.37でこう言ってます⇒(「過去は…、…あの滅びの日にすべて消えた…!」「私はそれに関わった者すべてを消す…」「当然…、私自身もだ…」)。つまり、ベリルやプリンセスはもちろんの事、自分自身すらも復讐の対象なんですね。しかし、現状では「ベリルの呪縛」によって自由に身動きが取れないため、これでは、誰に対しても「復讐」など到底叶いません。そもそもクンツァイトと言うのは、その復讐の手段として、奇しくもネフライトがAct.17で言ってたように、「ベリル様を押しのけ、クイン・メタリアの力を我が物にするつもり」だった訳です。彼はAct.33で、ベリル様の「やはり、何故かは分からぬが、クイン・メタリアの力が動いている…」と言う独り言を盗み聞きした際、「このままではメタリアの力はベリルのものに…」「手を考えねばなっ」と言ってましたからね。ところが、

1.         Act.35で、ついに、「ようやく対抗できる手が見つかった」と言って、「マスターを手に入れれば、ベリルへの切り札になる」と立てた計略も、セーラームーンとヴィーナスによって阻止され、

2.         続くAct.36では、そのマスターをベリル様に拉致されてしまった訳ですから、

       さすがのクンツァイトも、もはや万策尽きていたんですね。で、そんな頃に、Act.38で、地場衛から「もしオレが剣の勝負でお前に勝ったら、しばらくオレに協力してもらう…」と話を持ちかけられ、「ヤツがナニをするのか興味がある…」と、今までのところは、ずっと鳴りを潜め、Act.39では、「やってもらいたいコトがある…。プリンセスに攻撃を仕掛けろ…」と言う『狂言攻撃』の指示にも素直に従っていた訳です。で、それが、おそらく前回の一件で変わったんでしょうな…(↓)

―Act.43の再現VTR―

       うさぎちゃんと地場衛は、完全に夜になってしまった砂浜で、素足になって、波打ち際で水遊びに興じております…「あははは…………」「あははは…………」

       で、この様子を、ゾイサイトがいつものように覗き見してます…「……マスタァっ……」(←思わず天を仰ぐゾイサイト…)。すると、その横にクンツァイトもいて、「…二度目だな…プリンセスのために命を捨てるのは…」。ゾイサイト:「……」

       「きゃぁっ…あはは…」「あははは…………」(←地場衛が、うさぎちゃんを抱き上げてぐるぐる回る…)。

       クンツァイト:「何も変わってない…。次にヤツは星を捨てる…」。ゾイサイト:「……」

       クンツァイトはこれを見て、Act.38でのマスターとの約束⇒(「もしオレが剣の勝負でお前に勝ったら、しばらくオレに協力してもらう…」)の「しばらく」の期限はもう過ぎたと、そう判断したんでしょうな。つまり、「ヤツがナニをするのか興味がある…」と言っていながら、どうやらクンツァイトの目には、結局、こういった地場衛の一連の行動が、『すべては星を滅ぼさないために』やっているのだと言うコトが、分からなかったようなんですな。それに、何よりも、この時点でマスターの命が秒読み状態に入ってしまったため、もはや一刻の猶予もなくなってしまった訳ですからね。マスターを殺すのはあくまでも自分であって、ベリルに先を越される訳には行かないのですから。

        ★  ★  ★  ★  

       ピアノ部屋に戻ったゾイサイト…。

       ゾイサイトは、ナニか思いつめたように恐い顔をしながら、「革命のエチュード」を弾き始めました…

       …すると、ゾイサイトの体が白く光り、彼の体から分離するようにして、妖魔を生み出しました(←ゾイサイトの妖魔って、ナンだカンだ、Act.10の『レクイエム妖魔』以来、かれこれやっと2匹目なんじゃ…)。で、ナンかよく分かりませんが、配色と衣装がどことなくゾイサイトっぽいですな…(←コイツは『白妖魔』と命名させていただきます)。

       ゾイサイトと言う人物は、基本的に平和主義者なんでしょうね。彼は、Act.6で登場して以来、ベリル様に忠誠心らしきものを見せなかった以外は、ジェダイトくんに対してもネフライトに対しても協力的でしたし、Act.11のタキシード仮面との邂逅で前世の記憶に触れて以降は、決して自らプリンセスやセーラー戦士に敵対する言動も取ってませんでしたからね。復活後のゾイサイトは、マスターとプリンセスを引き離そうと諫言し続けてはいましたが、だからと言って、決してプリンセス個人に悪意を抱いたり、彼女を亡き者にしようなどと言う発想を持つような人間ではありませんでした(←だから、たとえばAct.35でヴィーナスに託した『思う相手のコトすべて忘れるオルゴール』なんてのは、まさにそんな彼の性格を象徴する道具だった訳です)。そんなゾイサイトですから、やはり直接自らの手でプリンセスの命を絶つのは忍びなく、こうして妖魔を遣わそうとしてるんでしょうね…(←皮肉にも、それがアダとなる訳なのですが…)。

        ★  ★  ★  ★  

       クラウンにて…。

       ※ 次のシーンですが、このシーンはDVD第11巻収録の「未使用シーン」と続けて紹介いたします…(↓)

       レイちゃんは、イスに座って美奈子に背を向けたまま、とぼけたような口調で、「どういうコトぉ?…今まで近寄りもしなかったのに…」と言います。美奈子はその後ろを歩きながら、「アナタに任せられると思ったからよ。…でも、見込み違いだったわ」…美奈子は立ち止まると、「前世を受け止められないなら…」、レイちゃんの方に振り向き、「戦士を辞めるのはアナタよ…!」

       「!…『誰も戦士を辞めろとまでは言ってないでしょ?!』…レイちゃんは思わず振り向いて、美奈子の顔を見ます。

       「!……」「!……」「!……」「…………」(←困ったバージョン)。

       「マーズ、アナタが決めなさい、戦士として、前世の使命を果たすのかどうか…」。レイちゃんはばっ!と立ち上がって美奈子と向き合い、「戦いをやめるつもりはないわっ…。でも……前世の使命のためじゃない…」「…そう、…じゃあ、ここにいる必要もないわね…『ここまで言えば、さすがに考えを変えるでしょ』(←昨夜はレイちゃんが冷静に攻め、美奈子が感情的に反応してましたが、ここではそれが逆転してます)。

       レイちゃんはその言葉を聞いて、少し寂しそうな顔をしながら、しばし考え込みます…「…………『ここであたしが出て行けば…、ヴィーナスはリーダーとしてここに残り…、これからは単独行動もやめて…、みんながあたしの代わりに彼女をサポートしてくれるはず…』。レイちゃんは、無言で上着をつかむと、階段の方へ向かいます…。

       すかさずまこちゃんが立ち上がり、「ちょっとホントに!?」。続いて亜美ちゃんも立ち上がり、「レイちゃんっ!…」。人型ルナも立ち上がって、「ヴィーナスやり過ぎよっ!」。レイちゃんは人型ルナに向かって「いいのよっ…」と制止すると、今度は亜美ちゃんに向かって、優しく、「…うさぎの事は…よろしくね…」と声をかけると、背を向けて階段を上がって行きます。

       すると亜美ちゃんは、「…『でも…!』と言うように半歩前に出掛かって止まります…。

       レイちゃんは、階段の途中で一度止まって振り返ると、美奈子に向かって、「…もう一つだけ…あたしが前世を受け止めてないなら…、あなたは…、今を受け止めてないんじゃない?」「!……『まだそれを言うのっ!』

       美奈子は、Act.40でレイちゃんから「手術する」話を持ちかけられた時、「あなたは!…まだ使命の重さが分かってないのよっ!!」と言ってそれを拒否してました。美奈子は前世の記憶がハッキリしてますから、前世の悲劇に対する当事者意識もハッキリとあります。だから美奈子にしてみれば、前世の記憶が甦らないが故の『クラウン・サイドの認識の甘さ』には、かなりの苛立ちがあるんですね。一番戦士の自覚が強いレイちゃんですら、Act.39では、人型ルナが「このままだと、前世と同じように、地球が滅んでしまうかもしれないから…」と言った時、「でも、ホントにそんな事になるのかしら…」と半信半疑なコトを言ってたくらいですからね。だから美奈子は、昨夜レイちゃんから、「あなたをリーダーとは認めない…」「戦士の力に目覚めてないからよ」と言われた時、それに対して、「あたしが戦士の力に目覚めてない?言いがかりはやめて!」「うそ」をついてまでやり返し、その結果、「仲間」としても「認めない」とまで言われ、「リーダー」の立場を失う窮地に立たされた訳です。

       美奈子はAct.26で、みんなの前でレイちゃんのコトを「アナタはサブ(リーダー)よっ!」と指名してる手前、その「サブ」から「戦士の力に目覚めてない」コトを理由に戦線離脱を言い渡されると、立場的にちょっと反論ができないんですね。実際、単独の攻撃ではもはや妖魔を倒せないコトは、昨夜の戦いで実感してしまってるはずだからです。だからこそ、レイちゃんにサポートの要請をしてきた訳ですが、それすらも撤回されてしまうとなると、もうあとがなくなってしまうんですな。そこで美奈子は、たとえ「戦士の力に目覚めてない」としても、『自分はリーダーとして絶対に必要なのだ』と主張するためには、あくまでも「前世」を大義名分に掲げて、「使命の重さ」をみんなに分からせる以外にない訳です。そのために、リーダーとして直接指揮を執るために(←つまり、クラウン・サイドの指揮権を「サブ(リーダー)」から自分に移すために)、美奈子はついにクラウンへ来た訳なんですね。

       ワシが思うに、美奈子は決して、最初からレイちゃんを追い出すつもりでここへ来た訳じゃないと思うんですよね。おそらく、『自分がリーダーの権限でここまで言えば、マーズは仲間を見捨てられるはずないんだから、きっと前世を受け入れて残ってくれるだろう』と計算してたんじゃないでしょうか。「マーズ、アナタが決めなさい」と言う言葉の中に、そのニュアンスが込められてるような気がします。でも、逆に、レイちゃんの方は、『ここであたしがクラウンを出て行ったからって、あたしとうさぎ、あたしと亜美ちゃんの友情に何も変わりはない。むしろ、ヴィーナスがみんなと一緒にいる時間が増える事の方が、彼女にとってきっとプラスになるはず』と思ったからこそ、ここでは、美奈子に対して、昨夜みたいに徹底的に反論もしなかったんじゃないでしょうか。

       レイちゃんが出て行き、がちゃん…とドアを閉める音だけが鳴り響く中…、人型ルナ、まこちゃん、亜美ちゃんが、おもむろに美奈子に向かってとした視線を投げかけます…。美奈子は背中越しにその視線を感じながら…「……『やば…、まさか本気で出て行くとは…』(←みたいな…?)。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらはうさぎちゃん…。

       うさぎちゃんは、お見舞いを終えての帰宅途中で、とぼとぼと歩道を歩いております…。すると、ふと花屋さんの前で立ち止まり、店先の花を見て「…きれい…」と言い、近付いて行って花を見始めます…。

       …とそこへ、ゾイサイトの放った『白妖魔』が現れ、歩道橋の上(?)から、遠目にうさぎちゃんの様子を伺ってます…。

        ★  ★  ★  ★  

       一方こちらは、マスターのお見舞いに駆けつけたゾイサイト…。

       ところが、地場衛はベッドから起き上がってて、ナニやら真顔で窓の外を眺めております…。「マスター!?…『もう起きても大丈夫なのですか?』「……クンツァイトが出て行ったな…」「わかるのですか?」「ここに来た影響かもな…。時々感じる…」「ベリルの呪縛を、逃れるつもりです…」「オレへの復讐のためか?」「そういうものを全て、クンツァイトは背負ったのかもしれません…」

       …その頃そのクンツァイトは、『ダーク・キングダムの森』の中にある、ナンかの儀式の祭壇みたいな所に剣を置き、水晶の玉をじっと見つめてから、意識を集中させるように目を閉じます…

       …ゾイサイト:「私は…、…マスターと共に…」

       先述したように、クンツァイトはAct.37で、(「過去は…、…あの滅びの日にすべて消えた…!」「私はそれに関わった者すべてを消す…」「当然…、私自身もだ…」)と言ってますから、その『復讐の対象』の中には、もちろん月の王国サイドのセーラー戦士達も全員入ってます。これは、『ダーキュリー事件』の際に、彼が当初から、最後にはマーキュリーを始末しようと考えていた事実からも明らかです。しかしながら、そんな彼の『復讐の対象』には、地球国サイドの四天王、つまりゾイサイト、ネフライト、ジェダイトくんの三人だけは入っていないんですな。なぜなら、前世での彼らは、最後までクンツァイトと共に『反乱戦争』を戦い、結果的にマスターの裏切りによって共に朽ち果てた仲だからです。クンツァイトは四天王のリーダー的存在ですから、マスターの裏切りを止められなかった罪は、あくまでも自分一人にあると、そう考えてるんでしょうね。だからこそ、「当然…、私自身もだ…」となる訳で、おそらく、ゾイサイトの言う、「そういうものを全て、クンツァイトは背負ったのかもしれません…」と言う言葉の意味は、そんなところなんじゃないでしょうか…。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらはうさぎちゃん…。

       どうやら、さっきの花屋さんで花を買ったようです…。嬉しそうに花の匂いを嗅ぎながら歩いてます…。

       すると、角を曲がった所で、うさぎちゃんはいきなり『白妖魔』に攻撃されます。ばんっ、ばんっ、ばーんっ!「きゃぁっ!」。三発目が花に命中し、せっかく買った花が飛び散ってしまいました(←ナニすんだこのヤローっ!)。

       「妖魔っ!」。うさぎちゃんは『白妖魔』の姿を見ると、とっさにケータイを取り出してみんなを呼ぼうとします。ところが、ゾイサイトのピアノの音が妨害電波となって、使い物になりません…「えっ!?」。うさぎちゃんが諦めてケータイを閉じると、そこへ、そのゾイサイトが心を飛ばして現れます…「プリンセス…」「!…」「…悪いが命はもらう…!」「……」。ゾイサイトはそう言い残すと、自分はさっさと消えて行ってしまいました(←ちょっとキミ、キミ、そんな大役を妖魔一匹で任せられるほど、その『白妖魔』は強いんか?!)。

       で、『白妖魔』が近付いて来たので、うさぎちゃんが「ムーンプリズムパワ〜」と変身しようとすると、その瞬間、ナンとこの妖魔は、その掛け声の途中でいきなり攻撃してきやがるじゃありませんかっ! ばーんっ!「やぁっ!」(←テメ、このヤローっ!)(←まるで初期のジェダイトくんや彼の妖魔みたいに汚ねーヤツだっ!)(←それほど、ゾイサイトの本気度が高いと言うコトなんでしょうか?)。うさぎちゃんは、「うっ…!」と地面に手を着いて倒れてしまいます。『白妖魔』は、うさぎちゃんの落とした花を踏みつけながら、こちらに迫って来ます…ぐしゃ…!

       うさぎちゃんは立ち上がると、一先ず退散して、さっき自分が歩いて来た角を戻って物陰に隠れ、あらためて「ムーンプリズムパワ〜、メーイク・アップ!!」と変身します

       で、変身し終わったセーラームーンが元の場所へ戻って来ると、今度は『白妖魔』の姿が消えてます…「え…?」。すると、突然セーラームーンの背後に『白妖魔』が現れ…(←って、あのぉ…思いっきり足音が聞こえちゃってますけど…)。セーラームーンが「! あっ!」気付いて振り向くも、一瞬遅く、妖魔に捕まって、首を絞められてしまいます…(←って、その卑怯な戦法もジェダイトくんそのものじゃないか…)。セーラームーンは必死で堪えながら、「フッ!」妖魔の腹に蹴りを食らわし…どかっ! ジャンプ&空中回転で妖魔から離れます。すると今度は、『白妖魔』はセーラームーンの着地の瞬間を狙って攻撃を放ってきやがりました…ばーんっ!「あぁっ!」(←このヤローっ!)。

 

 ★  ★  ★  ★   CMタイム― ★  ★  ★  ★  

 

       その後、セーラームーンはどこだかの広場に場所を移動して、『白妖魔』と戦っております…(←あれ?ここは、Act.6でジュピターが『タケル妖魔』と戦ってた場所みたいですな)。

       セーラームーンは、妖魔のパンチをかわしたり蹴りを入れたりしておりますが、前回の二度にわたる『対・水妖魔戦』のような鬼の形相はもうなく、すっかり普段のセーラームーンとして戦っております。

       しかーしっ! ワシが分からんのは、これ以降の戦闘シーンです。

       セーラームーンがスティックで『白妖魔』に突きを入れようとしますが、妖魔にその手をかわされ、その流れからセーラームーンは『白妖魔』に捕まってしまいます。ところが、その瞬間、いきなり何者かが攻撃を仕掛けてきて、どかーんっ! セーラームーンは「きゃっ!」『白妖魔』「ウワッ!」と、両者はお互いに飛び退き合って離れます。見ると、ナンと攻撃してきたのは『メタリア妖魔U』です…「あっ、…!」

       これは一体どう言うコトなんでしょうか?

1.       そもそも『メタリア妖魔』と言うのは、『泥妖魔』3匹が「ムーン・ヒーリング・エスカレーション」で合体しちゃって生まれちゃった『地中発生妖魔』です。なので、直接ダーク・キングダムの支配下にはないので、この『メタリア妖魔』には、もちろん『白妖魔』を助ける義理などどこにもありません。

2.       このシーンでは、明らかに『メタリア妖魔U』は、この両者が掴み合ってる瞬間、二人めがけて攻撃を仕掛けて来てました。しかもこの瞬間、むしろピンチだったのは、『白妖魔』に捕まってしまってたセーラームーンの方です。それでは、『メタリア妖魔U』はセーラームーンを助けようとしたのでしょうか?

3.       『メタリア妖魔』にとってセーラームーンは天敵のはずですが、だからと言ってコイツは、ダーク・キングダム支配下の妖魔のように、セーラームーンを付け狙うような行動はとっておらず、ここに現れたのも単なる偶然で、おそらく行き当たりばったりだったはずです。

4.       そこでワシが気になるのは、この『メタリア妖魔U』が、その天敵セーラームーンの「幻の銀水晶」が自分に与えてる影響について、正しく認識してるのかどうかです。仮に認識してるとすれば、『メタリア妖魔U』は、あくまでもセーラームーンにトドメを刺さない程度に攻撃して刺激し、それによって引き出した『負のパワー』を、「クイン・メタリア」本体に送り届けるための媒体として働いてるはずだからです。そう考えないと、この『メタリア妖魔』の一連の不可解な行動が、ちょっと説明つかないんですな。

5.       前回だって、自分の前に現れたマーキュリー、マーズ、ジュピター、セーラールナに対して、全く戦う素振りも見せずに、『泥妖魔』達に相手をさせて、自分はさっさとその場を立ち去って行きましたからね。これは明らかに、『セーラームーン以外には用はない』と言ってるようなものです。

       兎にも角にも、今までそれなりに『白妖魔』と互角に戦ってたセーラームーンは、一気に形勢不利に!…「…そんな…!」

        ★  ★  ★  ★  

       その頃、ダーク・キングダムの『エンディミオンの部屋』では…。

       ゾイサイトが、ナンか黙って考え事をしております…「……『今頃、白妖魔は頑張って戦ってるかなぁ…。でも、もしプリムンが出てきちゃったら、アイツじゃ勝てねーだろうなぁ…』などと考えておりましたら、ゾイサイトはふいに、ナンか視線を感じて横を向くと、さっきからじっと、自分のコトを見つめてたらしき地場衛と目が合っちゃって、「!…『あ、やべ…』みたいに目をそらして、窓際から離れようとします。しかし地場衛は、どうやらゾイサイトの心を見透かしてるらしく、そんなゾイサイトを引き止めるように話しかけます…「オレが…!」「!…」「…ベリルとの取引を蹴った事…、納得いかないみたいだな…」

       「いえっ…、ただマスターには…何より命を大切にして頂きたいと…『ふぅ〜、プリンセスを襲ってんのがバレたのかと思ったよ…』

       「…大切なものに順番なんてない…」「!…」「何かのために犠牲にできるようなものなら、最初から大したものじゃないんだ…『オレはただの人間で、もう前世のような、地球国の王子なんて大層な身分でもナンでもないんだからな…』

       「!……」

       「そりゃあオレだって死にたくないけどな…。…でも…」…椅子に腰掛ける…「そのために捨てられるようなものも持ってない…『オレに前世のような富や権力でもあれば、話は別だけどな…』。…オレがここへ来たのも…そういう事だ…『自分の命を犠牲にするより、大切なものを守るすべが他にないんだから…』「!…」

       …ゾイサイトは、Act.36で、地場衛が四天王を助けるために「ベリルの許へ下った」シーンを回想します…

       「……『あの時マスターは、プリンセスと我らの命を量りにかけたりしなかった…!』

       「お前だって…そういうものがあるだろう?…『順番のつけられない、本当に守るべき大切なものが…』「…私は……『実はずっと前からヴィーナスのコトが好きで…ってキャッ言っちゃったっ!』

       「それは捨てるべきじゃない…」「……『え?じゃ二人の交際を認めてくれるんですか?』「……『好きにしろ…』…地場衛は、ゆっくりと椅子に背をもたれ、そっと目を閉じ、そのまま静かに眠りにつくように、黙ってしまいました…「……『あとは、お前が決めるコトだ…』

       「……『やっぱりマスターはいい人だぁ…』

       地場衛は、この先うさぎちゃんを助けに行きたくても、もうここから出るコトができなくなっちゃってるんですね(←おそらく、黒木ミオが監視役として付いていないのも、もう外には出歩けないので、その必要がなくなってるからなんじゃないでしょうか?)。だから地場衛は、わざと気付いていない振りをしながら、それとなくゾイサイトに考え直させるために、急にこんな話を切り出したんじゃないでしょうか…。で、この、「大切なものに順番なんてない…」と言うのは、実は、Act.42でも、うさぎちゃんの口から『プリンセス・セーラームーンA』に向かって、同じ意味の事を言ってるんですね…(↓)

―Act.42の再現VTR―

       以下、『うさプリ・ミーティング・ルーム』にて…。

       うさ:「どうしてわかんないの?! 力を使えばこの星とか人が傷つくんだよ?!」

       プリ:「エンディミオンはどこ?」

       うさ:「まもるだって力を止めろって言ってたじゃんっ!」

       プリ:「エンディミオンはどこ?」

       うさ:「!……どうして、そんなに…」

       プリ:「…私にはエンディミオンしかいない。…プリンセスではない、私自身を見てくれた者は、エンディミオンしか…」

       うさ:「……」

       プリ:「…エンディミオンがいない星はいらない…」(←これが、前世で星を滅ぼした理由なんですね)。

       うさ:「……寂しいんだね…」

       プリ:「……」(←そう言われて、うさぎちゃんを見る)

       うさ:「でもダメだよっ、星は絶対滅ぼさない。だって、私には大切なものがたくさんあるからっ…」

       で、その「大切なもの」の回想シーン(↓)

1.       なるちゃん…。病院のベッドに横たわったまま、うさぎちゃんに微笑みかけてるシーン…「大丈夫だよ…信用してる」…、以下は無音(↓)

2.       うさママ…。Act.10で、母子ゲンカの末、帰宅するなり料理中のうさママに抱きついたシーン…、

3.       進悟…。Act.14の「未使用シーン」で、進悟に「うさぎに風邪ひく資格なんか、ないよなぁ…」と言われて、「どういう意味よぉ!」と頭を小突いたシーン…、

4.       美奈子…。Act.12の観覧車で、「イチゴは最後でしょ!」「最後だよねぇ〜!」!」と笑い合ってるシーン…、

5.       そして、亜美ちゃん、レイちゃん、まこちゃん、ぬいぐるみルナ…。Act.14の「うさぎちゃんを返して!」のあと、みんなで家路に就くシーン…、

6.       さらに、今回Act.42のクラウンで、「大っキライ」「レタスの炒めモノ」を食べる訓練を応援してくれてる亜美ちゃん、レイちゃん、まこちゃん、人型ルナ…

       プリ:「…それでも…いつかはきっと……お前もエンディミオンのために…」

       つまり、この回想シーンの中で、うさぎちゃんは、「大切なもの」に順番をつけてないんです。実は、ワシは一番最初にこのシーンを見た時、正直、どうしてなるちゃんが一番最初なんだろう?と色眼鏡で見てしまってたんですな。なぜなら、もしも「大切なもの」に順番があるとすれば、「月野うさぎ」の場合、エンディミオンを別にすれば、まず真っ先に来るのはセーラー戦士か家族か、絶対にそのどちらかになるはずなのに、どうしてなるちゃんなのか?しかも、どうして亜美ちゃん達よりも美奈子の方が先なのか?と…。しかしそれは、原作やアニメや、これまでの実写版の話の流れから植え付けられていた先入観に過ぎず、つまりその理由こそが、「大切なものに順番なんてない…」だったんですね。これは、それを『うさぎちゃん目線』で、映像的に語っていたんです。

       うさぎちゃんは、この事を、Act.39で地場衛から教えられてるんですね。それは「未使用シーン」に回されてしまったシーンなのですが、うさぎちゃんが人型ルナとの会話の中で、「衛だけ信じてればそれでいいの!」と言って「地場衛のコトを信用しすぎてるその姿を見て、地場衛は、これではまるで『前世のプリンセス』のような考え方になりかねないと危惧したので、「衛だけが大切な存在じゃないはずだと言うコトをもう一度思い出させようとして、敢えてうさぎちゃんの家族を事件に巻き込み、それによって「幻の銀水晶」の恐ろしさを実感させ、「お前が信じるのはオレじゃない…。お前自身だ!」と告げ、うさぎちゃんは進悟を見ながら、「私が、守らなきゃいけないんだ…」と、心を新たにしてるんです。これは、地場衛の考え方の根底に、「大切なものに順番なんてない…」と言う信念があればこそだったんですね。

        ★  ★  ★  ★  

       その頃セーラームーンは、たった一人で『白妖魔』『メタリア妖魔U』を相手に奮戦中なのでした…。

       セーラームーンは、『メタリア妖魔U』の剣を、片ひざ着いてスティックで受け止めると、それを弾いた勢いで『白妖魔』の前に行ってしまいますが、敵のパンチをかわしてスティックで応戦します。しかしそれが空振りに終わると、その勢いで今度は『メタリア妖魔U』の前に行ってしまい、出会いがしらに剣を振り回され、それを避けた勢いで地面に倒れてしまいます。ほとんど防戦一方です。

       すると、ナンと、いつの間にか『白妖魔』『メタリア妖魔U』は意気投合したのか、2匹仲良く並んでセーラームーンに迫って来ます…。さすがにこれは、一人で戦うにはちょっと相手が悪すぎます。セーラームーンはナンとか立ち上がりますが、「このままじゃ、やられちゃうっ…」と後ずさりします…こりゃそろそろヤバそうか?…と思われたその時、突然妖魔達が、どこからともなく攻撃を食らい、ばーんっ! それが腹に命中して、2匹とも地面に倒れます。

        ★  ★  ★  ★  

       ジュピター、ヴィーナス、マーキュリーの三人が助けに来ました。三人はセーラームーンを守るように前に並び立ちます(←でも、なぜかBGMは、今は亡きタキシード仮面のテーマ…♪ちゃららちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃらぁ〜〜♪)。

 

       「みんなっ!」「間に合ってよかったっ」…マーキュリーがセーラームーンに微笑みかけます。

       『白妖魔』『メタリア妖魔U』が立ち上がると、4人はカッコよくセーラー・ファイティング・ポーズを取ります。それから、ヴィーナスが「マーキュリー、ジュピター、行くわよっ」と指示すると、二人は「うんっ」「うんっ」とうなずいて、何故かセーラームーンを置いて妖魔達に切れ込んで行きます…「えっ…?」

       まず、ヴィーナスとマーキュリーが側転で2匹の間をすり抜けて行き、『白妖魔』が二人を追って後ろを向いた隙に、ジュピターがその背中に蹴りを食らわします…どかっ!

       その後、ヴィーナスが『メタリア妖魔U』と対峙し、マーキュリーが振り向きざまに『白妖魔』に蹴りを食らわします。ところが、その蹴りを『白妖魔』は腕でブロックし、すかさず反撃に出ると、マーキュリーは体勢を崩して背中を殴られ、地面に倒れてしまいます(←あれぇ?!)。それから、続けざまにジュピターも『白妖魔』に肩をど突かれて倒され(←ええっ!?)、誰に何をされたのか分からないヴィーナスも「うっ…!」と地面に倒れてしまいました(←こっちはまた体調不良か?)…ってナンだよキミ達っ! それじゃセーラームーン一人の方がよっぽど強いじゃないかっ!(←やはりマーズがいないと、大幅な戦力ダウンは必至だったか…)。

       『白妖魔』は、三人をあっさりマットに沈めてしまうと、すぐにセーラームーンの方にターゲットを切り替えます…「えっ…!」。次の瞬間『白妖魔』は、ゾイサイトばりに瞬間移動してセーラームーンの真横に現れ、「あっ!」、セーラームーンに襲い掛かります。

       それを見て三人は「うさぎっ!」起き上がり、ジュピターとマーキュリーがジャンプして立て続けに顔面に飛び蹴りを食らわし、「フッ!」ばきっ!(←おおっ!)、「ハァっ!」かすっ!(←当たりが薄いぞっ!)、それに続いてヴィーナスも、側転とバク転で勢いをつけ、渾身の『ヴィーナス・キーックっ!』「ハッ!」どかっ!と胸に打ち込みます(←おおっ! 意地を見せましたなっ!)。それで『白妖魔』は、背中からばったりと倒れます…。

       しかし、セーラー三連続キックで見事に倒したかに思われた『白妖魔』でしたが、すぐにブリッジをして跳び起き、何事もなかったかのように、再びセーラームーンの方へ向かいます…「えっ…!」。三人は慌てて『白妖魔』に抱きついて取り押さえ、「コイツ、うさぎばっかり…!」「プリンセスっ、逃げてっ!」「そんな…『みんなを置いて自分だけ逃げられないよ…!』

       すると次の瞬間、今までなぜか消えていた『メタリア妖魔U』(←やはりコイツは、攻撃されればもちろん応戦はするが、基本的にセーラームーン以外に用はないのだ…)がセーラームーンの後方に現れ、その声に気付いたセーラームーンが「あっ!」と振り向くと、『メタリア妖魔U』は、セーラームーンを指差してから手のひらを返し、まるで手招きでもするように、『こっちへ来い、邪魔の入らない所で勝負しようじゃねーか…』みたいな仕草をして、場所を移動します。

       それを見てセーラームーンは、一瞬考え込みますが…「……『大丈夫、もう力は使わない…!』、すぐに『メタリア妖魔U』を追って駆け出します。

       「プリンセスっ、ダメっ!」

        ★  ★  ★  ★  

       セーラームーンが『メタリア妖魔U』を追って建物の裏へ駆けつけると、当の『メタリア妖魔U』は待っている訳でもなく、立ち止まるでもなく、ただそのまま歩き去って行こうとしてるようにしか見えません(←コイツは一体ナニを考えて生きとるんだ??)。

       セーラームーンが「待ちなさいっ!」と言うと、『メタリア妖魔U』は立ち止まり、まるで、「んん?!…『ナンか用か?』みたいに振り向きます。セーラームーンはすかさず「ムーントワラ〜イト・フラッシュ!」を放ちますが、『メタリア妖魔U』は瞬時に消えてそれをかわしてしまい、次の瞬間、セーラームーンの背後に瞬間移動して(←コイツって、今まではジャンプして体を入れ替えてたのに、いつの間にか、こんなコトもできるようになったんか?)、ど〜んっ!という大音響と共に現れ、それから更に、剣を構えるたびに、かしゃん…かしゃん…、と三回ほど思いっきり音を立てますが、なぜか背後の音に超鈍感なセーラームーンが気付くはずもなく、毎度お馴染みのパターンで『メタリア妖魔U』が剣を振りかざしてトドメを刺しにかかります。セーラームーンは「あっ!」と気付いて振り向きます。セーラームーン大ピ〜ンチっ!

       で、いつもならここでエンディミオン登場!となる場面ですが、彼はもう二度とダーク・キングダムを出られません。そこで今回は、ナンと、いきなりゾイサイトが出て来て『メタリア妖魔U』の剣を受け止めます…がちっ!(←おおっ! ナンか知らんけどカッコいいじゃないかっ!)。

       でもセーラームーンは、「!……どうしてっ!?」「……『フッ、いい質問だ…。答えその1、そもそもコイツはダーク・キングダム配下の妖魔ではない。答えその2、ホントはヴィーナスを助けに来たんだが、間違ってコッチに飛んじゃった。答えその3、「お前の…邪魔をしたかった!」(←ネフライトの真似をしたかった)

        ★  ★  ★  ★  

       一方、こちらはヴィーナス達…。

       ヴィーナスがチェーンを『白妖魔』に弾かれ…、

       ジュピターが『白妖魔』に掴み掛かるも振り払われ…、

       ヴィーナスのパンチが『白妖魔』の上半身にヒットするもダメージはなく…、

       マーキュリーが何もせずただ画面上を横に通り過ぎて行き…、

       ジュピターが正面から『白妖魔』の胸に蹴りを入れて両手で肩を突き飛ばし…

        ★  ★  ★  ★  

       こちらはセーラームーン…。

       『メタリア妖魔U』がもう片方の手を剣に添えて力を込めると、ゾイサイトも負けじと、空いた手で自分の手首を押さえ、剣を支えます。ところが、今日のゾイサイトは体調がよくないのか、それともこれが彼の実力なのか、とにかく『メタリア妖魔U』の剣を受け止めるのが精一杯の状態です(←それとも、あまりにもカッコよすぎる自分に酔っているのか?…)。

       一方のセーラームーンも、ナニげにこの状況にどう対処していいのかさっぱり分からず、ただ呆然と事態を見守るばかりです…(←そりゃそうだろう…なぜならこの時点でのセーラームーン目線では、単に敵が仲間割れしてるとしか思えないんだから…)。

       すると次の瞬間、いきなり『メタリア妖魔U』「フンッ!」と力を込めると…、ぐさっ! ゾイサイトの表情が急変します…「アァッ……!!」「ハッ……!!」

       見ると、『メタリア妖魔U』の胸から6本もの剣が飛び出し、ナンと、ゾイサイトの上半身を串刺しにっ!!

        ★  ★  ★  ★  

       一方、こちらはヴィーナス達…。

       三人は、タンバリンの同時攻撃で、ようやく『白妖魔』を倒します。

       「早くプリンセスをっ!」。ヴィーナスはそう言ってセーラームーンの援護に走りますが、ところが次の瞬間、突然いつもの片頭痛に襲われて、左手で頭を押さえながら、「うっ…!」と立ち止まってしまいます…。

        ★  ★  ★  ★  

       一方、こちらゾイサイトは…、

       『メタリア妖魔U』「フンッ!」と言って、ゾイサイトを串刺しにした剣をシャキンッ!と引き抜くと、ゾイサイトは「う、…う…!」その場に倒れ込みます…。

        ★  ★  ★  ★  

       それと同時に、こちらヴィーナスも…、

       「うっ…!」とその場に倒れ込みます…。「!…」「ヴィーナスっ!」。ジュピターとマーキュリーが駆け出します。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらゾイサイトは、倒れながらも懸命に顔を上げて相手を見据え、最後の力を振り絞って『メタリア妖魔U』に剣波を放ちますが、紙一重でかわされ、空間移動で消え去られてしまいます…「あぁ…うっ…『む…、無念…』ばたっ!「ゾイサイトっ!」…思わず駆け寄るセーラームーン…。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらヴィーナスの方も、「ヴィーナスっ!」と二人が駆け寄りますが、ヴィーナスの意識は、どんどん遠のいていきます…。

       ナニげにこの場面では、ジュピターもマーキュリーも、ヴィーナスのコトを「ヴィーナス」「ヴィーナス」と呼んでましたねぇ…。

1.       ちなみに昨夜の場面では、亜美ちゃんは美奈子の前で、美奈子のコトを、「でも、美奈子ちゃんは、一番前世の記憶を持ってるし…」と言ってたんですから、だったら、変身後のヴィーナスのコトも、そのまま「美奈子ちゃん」と呼んだっておかしくはないはずです。しかしながら、おそらく亜美ちゃんは、あのあと美奈子がレイちゃんをクラウンから追い出してしまったので、亜美ちゃんは、戦士のリーダー「セーラーヴィーナス」としては認めるが、クラウンの仲間「美奈子ちゃん」としては認めないと言う風に、内心では、半分はまこちゃんに追随し、半分はレイちゃんに追随してる、と言う中立のニュアンスがあるんでしょうねぇ…。

2.       ちなみにルナは、うさぎちゃん達のコトはみんなそのまま『現世名』「うさぎちゃん、亜美ちゃん、レイちゃん」と呼ぶのに、美奈子だけはヴィーナスやり過ぎよっ!」と、『前世名』「ヴィーナス」と呼んでましたね。逆にアルテミィ〜スは、うさぎちゃん達のコトはみんな『前世名』で「プリンセス、マーキュリー、マーズ、ジュピター」と呼ぶのに、美奈子だけはそのまま『現世名』で「美奈子」と呼ぶんですね。つまり、この2匹のぬいぐるみネコは、共に過ごした時間の長さに従って、それぞれのパートナーの呼び方が定着してるんですね。ルナもアルテミィ〜スも、それぞれ自分のパートナーに関しては、変身後の『前世名』よりも、変身前の『現世名』で名前を呼ぶ機会の方が圧倒的に多い訳ですからね。逆に相手のパートナーに対しては、変身前の『現世名』よりも、変身後の『前世名』で呼ぶ機会の方が多い訳です。

        ★  ★  ★  ★  

       その後、こちらセーラームーンとゾイサイトは…、

       なぜか場所を移動して、どこだかの公園の芝生の中の大きな一本の木の下にいます…。

       ゾイサイトが、その木にもたれながら腰を下ろし、セーラームーンがその傍らにしゃがみ込んで、声をかけます…「大丈夫っ?! しっかりしてっ!」「…プリンセス…許して欲しい…。あなたの命を狙ったこと…マスターへの…裏切りだ…」「…そんなこと…、助けてくれたじゃないっ!」

       ゾイサイトは首を横に振りながら、「…忘れてはいけなかったのだ…、私の…何ものにも代え難い…思い…、いかなる時も…マスターと…共に…」「…………」

       ゾイサイトが繰り返し口にしている、この、「マスターと共に…」と言う言葉の意味は、単に物理的な意味で『マスターのそばにいる』と言う意味ではなく、あくまでも精神的な意味で、『マスターと「思い」を共有する』と言う意味なんですね。だからゾイサイトは、クンツァイトとは違って、マスターの裏切りを「裏切り」と考えるような事もしなかった訳です。であればこそ、マスターが命を捨ててまで守ろうとしたプリンセスを、『自分も、同じように命がけで守らねばならないのだ』と言う事であり、マスターが「大切なものに順番なんてない…」と言って、『プリンセスも四天王も、同じように命がけで守った』ように、自分も、『マスターもプリンセスも、同じように命がけで守らねばならない』、それを、「いかなる時も」「忘れてはいけなかったのだ」と言ってるんですね。実際ゾイサイトは、前世の記憶を取り戻して復活してからは、プリンセスやセーラー戦士に対して、決して敵意を抱いたコトはなかった訳ですからね。だからこそ彼は、最初にうさぎちゃんに向かって、「プリンセス…、…悪いが命はもらう…!」と、わざわざ「悪いが」なんて断りを入れてるんです。

       ゾイサイトは遠くを見つめながら、右手を虚空に差し出し、「クンツァイト…、ネフライト…、ジェダイト…、…もう一度…マスターの、もとへ……『あと、ヴィーナス…、頭痛薬は…、二人で借りたアパートの…、ベッドの横の…、タンスの引き出しの、上から2番目に…、白い救急箱が…』…そう言ってゾイサイトは、目を閉じると、虚空でピアノを弾き始めます…曲は、ショパン作曲「エチュード 第3番 ホ長調 作品10の3 《別れの曲》」

        ★  ★  ★  ★  

       その頃、ダーク・キングダムでは…。

       ベリル様の前に跪いていたジェダイトくんの心に、ゾイサイトの「別れの曲」が鳴り響きます…「!……ゾイサイトっ!」。ベリル様は振り返ると、「なんだ?!」。ジェダイトくん:「…いえっ…」…するとジェダイトくんの脳裏に、前世での、あの楽しかった腕相撲大会の様子が、モノクロで回想されます…

       …在りし日のネフライトに、自分があっさり負けたシーンです…。マスターやクンツァイトが見守る中、無邪気にはしゃぐネフライトの笑顔が涙を誘います…

        ★  ★  ★  ★  

       すると場面は、再びゾイサイトを経由して、クラウンのネフリンに切り替わります…。

       彼はいつものようにモップで床を掃除してます…。ネフリンの心にも、ゾイサイトの弾く「別れの曲」が届いたようです。彼は突然『ハッ!』と動きを止めて振り返ると、音の聞こえる方に顔を向けます…「……『ゾイサイトが…?』

       おそらくネフリンは、四天王時代の力が戻ったお陰で、ゾイサイトの呼びかけるピアノも聴こえるようになったんでしょうね。しかしネフリンの場合、さっきのジェダイトくんとは違って、依然として彼は前世の記憶を全く取り戻してないのですから、そんな彼にとって、ゾイサイトの死が、一体どんな意味や感傷もたらすと言うのでしょうか? おそらくネフリンには、ダーク・キングダム時代のAct.12の時に、彼の目の前でゾイサイトが「プリンセス・セーラーヴィーナス様」に秒殺された時と同じような感情しか、ゾイサイトに対して沸いてこないはずです。

       なのでネフリンは、じきにまた仕事に戻って、まるで何も聞かなかったかのように、黙々と床を拭き始めます…「…………『どっちみち、今のオレには、もう関係のないコトだ…』

        ★  ★  ★  ★  

       すると今度は、場面が『ダーク・キングダムの森』のクンツァイトへ切り替わります…。

       祭壇の前に、じっと佇むクンツァイト…彼は突然カッ!と目を見開くと、剣を掴み取って鞘を脱ぎ捨て、剣先を自分の腹に当て、そして一気に突き刺します…「…クッ…うっ…うぅ…う゛あ゛ああああああああああああああああっっっっ…………!!!!」。その傷口から、「ベリルの呪縛」を意味する黒紫の花びらが吹き出します…。

       そうか…クンツァイトが一体どうやって呪縛を解くのかと思ったら、要するにネフライトがベリル様に自害させられたのと同じ方法を選んだんですな…。ただし、前回も書いた通り、自害させられたはずのネフライトが蘇生されたのは、『プリンセス・セーラームーンB』の長時間にわたるハープに治癒されたからこそです。ひょっとするとクンツァイトは、ここでこうして、『プリンセスのハープ』が聴こえて来るのをじっと待っていたのかもしれません。ところが、今やそれも保障の限りではなくなってしまったのですから、「イチかバチか…命が尽きればそれまでだ」と言わざるを得ず、突然訪れたゾイサイトの死と波長を合わせる事で、何か奇跡が起こる事を期待したのかもしれません…。

        ★  ★  ★  ★  

       場面は戻って、ゾイサイト…。

       ゾイサイトは虚空でピアノを弾きながら、最後に「…マスター…」と言い残し、彼の右手も、曲を終わりまで弾ききるコトなく、とうとう力尽きて、ばたりと地面に落ちます…「……」

        ★  ★  ★  ★  

       その瞬間、『エンディミオン部屋』の地場衛が目を開け、「!!………ゾイサイトっ!」と叫びます…。

        ★  ★  ★  ★  

       そのゾイサイトは、白い光に包まれて、やがて石となって宙に浮き、セーラームーンが両手を差し出すと、その手の上に落ちます…。それから真っ二つに割れると、粉々に砕け散って、きらきらと光の粒になりながら、消えて行きます…「……」。この消え方は、もはや彼に復活はないという事を表わしているようです…。

       Act.37に出て来た前世の回想シーンの中で、クンツァイトは、我らの剣は、あるじのために死する剣です」と言いましたが、この、ゾイサイトの死に様もまた、まさに「あるじのために死する剣」だったと言えましょう…。

        ★  ★  ★  ★  

       次回は、美奈子が変身できないっ?!

        ★  ★  ★  ★  

       セーラームーン:うさぎちゃん(沢井美優さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(沢井美優さん編)▼】

       マーキュリー:亜美ちゃん(浜千咲(現・泉里香)さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(浜千咲(現・泉里香)さん編)▼】

       マーズ:レイちゃん(北川景子さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(北川景子さん編)▼】

       ジュピター:まこちゃん(安座間美優さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(安座間美優さん編)▼】

       ヴィーナス:美奈子(小松彩夏さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(小松彩夏さん編)▼】

       ぬいぐるみルナ(声・潘 恵子さん):人型ルナ(小池里奈さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(小池里奈さん編)▼】

       アルテミィ〜ス(声・山口勝平さん):「」。『』。

       その他:「」『』

[2009年8月16日(日)初稿 トモロー]


Act.45:ジュピターvsメタリア妖魔編

 

【Act.43:前世のプリンセスと現世のうさぎちゃん編▲】 【トップページ▲】 【筆者紹介へ▼】


     今回レビューしたAct.44は、「美少女戦士セーラームーン DVD 第11巻」(バンダイビジュアル)に収録されております(↓)

 

DVD第11巻 作品本編(4話収録)

 

Act.41 Act.42 Act.43 Act.44 

毎回映像特典(16分)

 

「セーラームーン」におしおきよ

スペシャル座談会

@鈴村展弘監督インタビュー

Aセーラー戦士座談会〜1年間を振り返って〜その3

Act.44 ゲストキャスト

 

 

 

 

 

セーラー戦士アクション:

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