―実写版セーラームーンを検証する―


Act.32:エンディミオン覚醒編――

 

       本稿は、2004年5月22日(土)にTBS系列各局で朝7:30〜8:00に放送された、「美少女戦士セーラームーン」(実写版)第32話の感想記(DVD鑑賞レビュー)です。

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       セーラー解説はうさぎちゃん:「ついに、まこちゃんの戦士の力が目覚めましたっ、ぱちぱちぱちぱち…。一人だけ遅かったの気にしてたから、ホントよかったですっ…。ただ…」

     前回の回想シーン⇒「あたし、分かったよ…。一人になるコト、風を聞くコト、ぜんぶ前世から決められてた…。私達の今は…前世に理由がある…」「…」「そうだろ…?」。「……『う〜ん…て言うか…まさかジュピターに先を越されるとはなぁ…』

       「私、そんなむずかしいコト考えたコトなかったけど(←だろうねぇ…)…、みんな…前世とナニか関係があるのかな? 私と…地場衛のコトも…」

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       こちらはその地場衛…(←もう「ロンドン」のテロップは出さなくてもいいのか?…)。

       ところでこれ、前回のラスト・シーンと着てる服が違いますな…前回のラスト・シーンの続きはこのあとに出て来ますから、このシーンは、それよりも前の日の出来事、と言う事になりましょうか…。

       ナンか、ベッドに腰掛けて、神妙な面持ちで、物思いに耽っております…「…(心の声→)地場衛…、エンディミオン…、それ以外の自分など…いないのだとしたら…」

       これは前々回Act.30での言葉⇒(「オレは…、自分の名前も何もかも、他人や前世から与えられている…。…だから…、…そうじゃない自分が欲しかった…!」)を受けてますから、ここで言う「地場衛」とは、「他人」(←日下氏?)から与えられた名前であり、一方の「エンディミオン」「前世」から与えられた名前と言う事ですね。要するに彼は、日下家で『籠の中の鳥』のような人生を送る「地場衛」でもなく、前世の運命を引きずる「エンディミオン」でもない、そのどちらでもない「自分が欲しかった」と言ってた訳です。だから彼は、日本を発つ時⇒(「結局、これも何もかも、最初から決められていただけのコトなのか、見極めて、もう一度自分が誰なのか、探してみる…」)と言ってたんですな。てコトは、今回のこのセリフに続く言葉は⇒「地場衛…、エンディミオン…、それ以外の自分など…いないのだとしたら…『結局は、そのどちらかを受け入れるしかないのか?』になります。

       …そして彼はこうつぶやきます…「…うさぎ…、お前も…前世を受け入れてるのか…?」

       「お前と言う事は、彼はこの時点で、「エンディミオン」の方の自分を受け入れる方向に、気持ちが傾きつつあるんでしょうな…。それはすなわち、こうして日下家の庇護の下に過ごしている「地場衛」としての留学生活を、捨て去ると言う意味になる訳ですね。

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       そのうさぎちゃんは、自宅の自分の部屋で、冬服の整理整頓をしております…。

       このシーンのうさぎちゃんの服も前回とは違うので、地場衛同様、ここだけ日付がさかのぼってるものと思われます。

       季節がら、もう着なくなった冬物の服を、タンスの引き出しから出して、押入れにしまうために収納ボックスに詰めております。すると、タンスの引き出しから、例の『白い手編みのマフラー』の入った紙袋が目に留まり、うさぎちゃんは、ナニげにそれを取り出して、物思いに耽っております。すると心の中に、ぬいぐるみルナの言葉が浮かんできます…⇒(「プリンセスと、王子の恋は、不吉なのよ…」)。「…失恋するって、最初から決まってたんだな…」。うさぎちゃんは、マフラーを裸のまま引き出しに戻して、パタンとしめてしまいました。

       ちなみにこの「不吉」って言い方は、当初からずっと使われ続けてますけど、ワシ、ナニげに最初はピンと来ない言葉だったんですよねぇ…。なぜなら、「不吉」って言葉は、基本的に未来に起こることを予感して言う言葉なのに、指してる内容は過去(前世)の話ですからねぇ…つまり言葉の使い方としては矛盾してるので、あまり正しくないからピンと来ないんですが、でも、「それを敢えて使う意味は?」と考えれば、『過去の話だけど、その真相は誰も知らない。そしてそれが再び未来にも起ころうとしてる』…だから「不吉」なのだと…。ここまで補完して、やっとピンと来る言葉になるんですねぇ…。つまりこれらのシーンは、うさぎちゃんと地場衛の、前回以前のお互いの心理状態を、もう一度ここで確認し、それが前回から今回にかけて、どのように変わっていったのかを示すためのものだったんですね。で、前回の『まこちゃんと元基のデート』以前のうさぎちゃんの心理状態と言うのは、つまりこの頃のうさぎちゃんは、みんなの意見に従って、まだ、こうやって地場衛への感情を抑えていられたんです…。ところが…

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       こちらはダーク・キングダム…(←ここからが、前回のラスト・シーンの続きです)。

1.       ネフライトが、いきなり掌でピアノの鍵盤をガーン!とぶっ叩いて、「何も見えんっ! 何も思い出せないぞっ! オレの前世はどうした!」

2.       「ならば会ってみろ、我らがあるじに…!」。そう言うと、ゾイサイトは「月光の曲」を弾き始め、目を閉じて意識を集中します…。

3.       すると、ゾイサイトのピアノ部屋の片隅が、ロンドンの地場衛の下宿先とシンクロし、ぼよよよよ〜ん…そこに地場衛の姿が現れます…「……」。ネフライト:「!…」。地場衛:「……」。ネフライト:「お前が…、マスター…、エンディミオン…」。地場衛:「……」。ネフライト:「……」

4.       するとそこへ、クンツァイトがやって来て、「これはなんの集会だ?」。さらに、クンツァイトをスパイ活動中のジェダイトくんまで、部屋の入り口の陰から覗き見しております…「……」

       クンツァイト:「お前まで前世に興味をもったのか?!」。ネフライト:「悪いか?」「思い出したところで、お前の『カラッポの』頭を支配するのがベリルから、あの男に代わるだけだぞ?!」。クンツァイトは、剣の鞘で地場衛を指差します。ゾイサイト:「無礼だぞ! クンツァイトっ!(←いきなり立ち上がり)お前は前世でのマスターを覚えているだろう!?」「お前こそ覚えてるはずだっ!……マスターがナニをしたか…」「……」…ゾイサイトは思わず黙ってうつむいてしまいます…。

       するとここで、地場衛の脳裏に、突然、前世での記憶がよみがえります(←例の、瓦礫に埋まった四天王の三人の死骸の横で、クンツァイトが「う゛わ゛あ゛ああああああああああ〜〜〜っっっ!!!」と雄叫びを上げてる映像です…)、どうやらこれが地場衛の脳裏に甦ったらしく、地場衛は急に激しく動揺して頭を押さえます。

       そうなんです…ワシは以前Act.26の時に、この『クンツァイトの雄叫び映像』を、「どう考えても奇妙」と書いたのですが、このシーンを見ても分かるように、やっぱりどう考えても奇妙ですよね? なぜなら、ここでこの回想シーンを脳裏に描いて見ているのは、クンツァイトでもなければ、ゾイサイトでもない、地場衛なんですよ? おそらく地場衛は、四天王が全員揃った場所に身を置いた事でスイッチが入ったのだと思われますが、この、いつもクンツァイトが憎々しげに回想してる『前世の悲劇の映像』を、今、地場衛が思い出し、その光景を目の当たりにし、そして、そのあまりの悲惨さに、恐れおののいているんです。で、この『クンツァイトの雄叫び映像』における「奇妙な点」とは、三つあります。それは、

1.       なぜ、この映像を地場衛が記憶しているのか?

2.       なぜ、この状況でクンツァイト一人が生きているのか?

3.       そして、なぜ、これが、ゾイサイトがAct.24で回想した『悲劇の映像』と違うのか?

       ※ この三つの謎を解くためには、Act.38まで待たないと、全ての判断材料が出揃いません。同時に、プリンセスとエンディミオンの「奇妙な死に様」の現場検証もAct.38で可能になりますから、これで、前世の謎の全てが完全に解き明かされます。しかしそれについては、もちろんその時に詳しく説明したいと思います。今回ここで重要なのは、いずれにせよ、この『悲劇の映像』をきっかけに、地場衛が、ついにエンディミオンに覚醒する事になった…と言う事です。

       ゾイサイト:「だからこそ…前世と同じ悲劇を繰り返さないために、我らはマスターと共にあるべきだっ!」「違うなぁ…。前世ある限りすべては繰り返す。…その前に私が終わらせれば…『それで全てに対して復讐する事ができる』。クンツァイトが地場衛に歩み寄ろうとすると、ネフライトが「クンツァイトっ! お前は出て行けっ! 私は前世を思い出すっ」「お前の出る幕ではないっ!」「ナニっ!」「お前は下がってろっ!」。ゾイサイト:「いい加減にしろっ!」ここで三人が大口論となり…、地場衛はナンか頭いたそうで…、一方、物陰から『家政婦は見た』状態で覗き見してるジェダイトくんは、「何を話している?…「ぜんせ」とはナンだ?…『そもそも「ぜんせ」の意味が分からん…』(←辞書ひけっ!)。

       ここで、ジェダイトくんがこの独り言を言ってる最中に、三人がゴチャゴチャ言い争ってるのですが、聞き取れる単語だけ拾ってみましたところ…(↓)

     「マスター」。ゾ:「落ち着けっ!」。ク:「裏切り」。ゾ:「なぜ分からないっ!」「もうこれ以上あの二人を」。ネ:「邪魔」。ネ:「クイン・メタリア」。ゾ:「会わせるのは危険」「とにかく」。ネ:「どう言うコトだ」。ゾ:「落ち着けっ!」「いい加減にしろっ!」。地:「やめろ…」。ゾ:「分かってるのかっ!」

1.       ここで、ネフライトが「クイン・メタリア」と言う単語を発してますが、おそらくコレは、彼がAct.17でジェダイトくんに言った、クンツァイトに対する陰口⇒(「ベリル様を押しのけ、クイン・メタリアの力を我が物にするつもりかもしれんっ!」を、直接クンツァイト本人に言ってるんでしょうな。

2.       で、クンツァイトは、とにかくマスターの「裏切り」の一点張りで、

3.       ゾイサイトは、「もうこれ以上あの二人を会わせるのは危険」と、マスターとプリンセスの関係について危惧しているようです。

       …等々と、ごちゃごちゃと口論してるさ中、地場衛が、突然人が変わったように「…やめろっ!……クンツァイトっ「!」ゾイサイトっ「!」ネフライトっ!」「!」みんな黙って、地場衛の方を振り向きます。「…ジェダイトっ!『見〜っけっ!』。ジェダイトくん:「!『あ、見つかっちゃった〜っ!』。地場衛:「前世などと…、どうしてそんなものにとらわれる!?……どうしてそっから出ないっ!?」。すると、一瞬、地場衛の姿が、かつてのマスター・エンディミオンに!(←おおっ! あの、『めちゃめちゃ肩幅の広いカッコいいエンディミオン』です)。

       クンツァイト:「!」。ゾイサイト:「!」。ネフライト:「!」。ジェダイトくん:「!…」

       地場衛:「…ハッ…今のは…?!」。ゾイサイト:「マスターっ、記憶が!…『て言うか、ステキ…。クンツァイト:「マスター!……今まで通り、どこか片隅に引きこもっていてもらおうか…。…そうすれば破滅の日まで静かに暮らせる…。…が…、…できないのであれば…」。地場衛:「ゾイサイト…、お前が言ったな?……オレはオレだと…」。ゾイサイト:「…『うん…』。地場衛:「…そうかもしれない…」

       するとクンツァイトは、剣を抜いて、それを地場衛に突きつけます…。

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       場面変わって、クラウンの受付…。

       元基が、受付のカウンターでカレーを食べながら電話してます(←まだ包帯してます)…これは前回の『まこちゃんカレー』ですな(←スプーンとお皿とライスの盛り方と福神漬けの盛り方が前回のと一緒です)…今となっちゃ、きっとしょっぱい味がしてる事でしょうなぁ…「いやっ、だからぁ、じゃぁぱにぃ〜ず……ああんっ、日本語しゃべれる人いないんですか?」(←って、アンタが英語しゃべれよ…)。

       そこへ、うさぎちゃんと亜美ちゃんとレイちゃんが入って来ました…(←三人とも私服姿です)。「そっちに下宿してた、ち・ば・ま・も・る…」。ぷつっ、ぷっ、ぷー、ぷー、ぷー…「あぁっ、切られた…」

       「元基くん? ナニ? どうかしたの?!」「大変なんだよっ! さっき連絡があって、衛がロンドンで行方不明になってるって」「!!…」

       これ、三人とも私服姿なんですが、このあとの展開を見ると、地場衛はあのあとすぐに失踪し、その直後に、その件でゾイサイトがベリル様に呼び出されてますから、この時点では前回の土曜日からまだ一日しか経っておらず、つまり今日はその翌日の日曜ですね。だから元基のカレーも、昨日まこちゃんからもらったやつの残りです。

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       「♪じゃ〜ん…ひとみは〜いつ〜も〜ジュ〜エル〜(ジュ〜エル〜)…♪」(←ここでオープニングです)

 

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       オープニング開けはルナカラ…。

       うさぎちゃんが、『捕らえられた宇宙人』状態で、亜美ちゃんとレイちゃんにイスに押さえ付けられてます…「ねえ! 私すぐロンドン行くよ! 探しに行きたい! 事件に巻き込まれたのかも!」「うさぎ、落ち着いてっ!」。ぬいぐるみルナ:「いくら変身したって、今のうさぎちゃんじゃ、まだそんな遠くに行けないのよ?」(←あのぉ…別に変身しなくても、普通に飛行機とかじゃダメなんですか?)(←で、ちなみに「今のうさぎちゃん」だと、変身するとどこまでなら行けるんでしょうか? お隣の韓国ぐらいまでなら行けますか?)(←で、その際は、やっぱ泳ぎ?)。

       「だってぇ…!」「元基くんも警察に届けたって言ってたし…!」「行っちゃダメよ! プリンセスと王子の恋は、不吉って言ったでしょ?! 彼のコトを忘れなきゃ! 前世と同じコトを繰り返さないために、今があるのよ…」「……」「……」「……」

       今日は、まこちゃんだけ来てませんねぇ…。やはり昨日の今日なので、さすがに元基と顔が合わせづらいんでしょうねぇ…。

       で、今回の冒頭のシーンで、わざわざ前回の『まこちゃんと元基のデート』以前にまで日付をさかのぼらせて、その当時のうさぎちゃんの心理状態を再確認させていたのには、きちんと理由があったんですね。と言うのは、ここでうさぎちゃんが「ねえ! 私すぐロンドン行くよ! 探しに行きたい! 事件に巻き込まれたのかも!」と興奮している理由が、ただ単に、『地場衛・行方不明事件』に対して突発的に反応してただけではなく、前回(昨日)の『まこちゃんと元基のデート』のせいで、その時すでに、うさぎちゃんの地場衛への感情が誘発されてた事を示すためだったんです。ところが、それを示すための重要なシーンが、作品本編ではカットされてしまってて、「未使用シーン」に回されちゃってたんですね。で、その「未使用シーン」と言うのが、前回も紹介したクラウンのシーンで、うさぎちゃんが「あ〜あ…、デートか……いいなぁ…」と言ってたシーンだったんです。

       今回の冒頭のシーンは、前回元基が『マフラー』を失い、逆に今回地場衛が『マフラー』を得るみたいな風に演出するために、ここで視聴者にもう一度『マフラー』を思い出させる目的もあったのですが、単にそのためだけではなかったんですな。

       ※ そして、この「あ〜あ…、デートか……いいなぁ…」と言うセリフが、実は、別の意味でも、さらに重要なセリフだった事が、次回において判明します。

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       こちらダーク・キングダム…。

       ベリル様:「ゾイサイト、なぜ呼ばれたか分かるな?」。ゾイサイト:「さあ…?」「あの男をどこへやった? お前の部屋へ心を飛ばした姿を、ジェダイトが見ておる…」。ジェダイトくん:「…『や〜い、チクっちゃった♪』「そのあとどこへ消えたのだ?! 答えよっ!」…そう言うとベリル様は、ゾイサイトに『ベリル様ビーム』(←勝手に命名)をしゃーっ! びびびびっ!と浴びせ、ゾイサイトは倒れかけてひざまずきます。

       ジェダイトくん:「ゾイサイト! 答えた方がいいぞっ」(←って、その心配の仕方はナンだよ?!)。「答えようがない…私も知らん…」…立ち上がるゾイサイト。「記憶は戻ったかっ!?」(←誰の? エンディミオンの?)…ベリル様は再び『ベリル様ビーム』を放ちます。しゃーっ! びびびびっ! ゾイサイト:「さあ…?」「まさかプリンセスのところへっ!」…再び『ベリル様ビーム』しゃーっ! びびびびっ! ゾイサイト:「あははは…さあ…?」「!…わらわを愚弄するかっ! なんのためにそなたの自由を許したと思っているっ!」(←あれ?…ひょっとすると、ゾイサイトはベリル様の命令で地場衛に纏わりついていたのか?)…またまた『ベリル様ビーム』しゃーっ! びびびびっ!

       ゾイサイトはついに、「うわっ!」と吹っ飛んで気絶してしまいます。それを、ジェダイトくんも気の毒そうに見てます(←ってお前のせいだろがっ!)。しかし、その後もこれでもかと『ベリル様ビーム』を食らわすベリル様に、ジェダイトくんは、「ベリル様っ! もう気を失っておりますっ」(←仲間を売った事が怖くなったか?)。ゾイサイト:「……『フッ、…ウソだよ〜ん…♪』(←これ、マジで、口元がかすかにぴくっとニヤつきましたよ…?)。ベリル様:「おのれぇ〜…はぁ、はぁ…」

       ベリル様が、とうとうエンディミオンの事で取り乱しましたねぇ…(←ジェダイトくんはその様子を見て、果たしてナニかを感じたでしょうか?)。さて、ここでベリル様にとって問題なのは、「あの男をどこへやった」かではなく、エンディミオンの「記憶は戻ったか」どうかなんですね。Act.30でも、ベリル様とクンツァイトの間で、次のようなやり取りがされてました(↓)

―Act.30の再現VTR―

       ベリル様は、ようやく黒い胞子を飛ばすのをやめ、「お前を自由にさせておくのは、その方が役に立つと思うゆえ。…しかし余計な事をすればいつでも…」「……余計な事とは…?」「ゾイサイトの邪魔だっ!」「なるほど…。マスターの目覚めを待っているのはヤツだけではない…。が…、…目覚めたところであなたに…」「それが余計な事っ!」「…………お言葉どおり…」。クンツァイトはうやうやしくお辞儀し、そのあとベリル様に背を向けると、憎悪むき出しの表情を浮かべ、その場を立ち去ります。

       要するに、ゾイサイトに「なんのためにそなたの自由を許したと思っているっ!」かと言えば、「マスターの目覚めを待っている」からで、エンディミオンの記憶が戻れば、当然「プリンセスのところへ」行く事は分かってるんですから、「どこへ」行ったかなんて最初から問題じゃないんです。ベリル様は、単なる『現世人の地場衛になんか用はないんですな。あくまでも、前世の記憶を取り戻した「エンディミオン」でなければ、会ったところでナンの意味もないんです。ただ単に『現世人の地場衛に会うだけでいいのなら、Act.10で自らゾイサイトに心を飛ばさせてセーラー戦士の前に出向いたように、いつだって地場衛の前に行けばいい訳ですからね。でも決してそれはしません。それでは意味がないからです。

       たとえば、原作・アニメのクイン・ベリルは、いずれも、タキシード仮面の素顔を見てそれがエンディミオンだと分かり、『真のプリンセス覚醒』の時に、クンツァイトにタキシード仮面を連れ去らせ、ダーク・キングダムで彼を洗脳して部下にしてました。しかし実写版のベリル様は、そういう洗脳は、四天王に対してはやってますが、本命のエンディミオンに対しては決してしないんですね。四天王のように『恋愛洗脳』で手に入れても、結局何の充足感も得られない事は、すでに四天王で学習済みであり、しかも、四人のうち半分は洗脳さえし切れなかった訳ですから…。

       ※ 実写版のベリル様が、どうしてエンディミオンの目覚めを待っていたのか、その本当の真意が分かるのはAct.38においてです。詳細はその時に譲りますが、意外と言うか『らしい』と言うか、実写版のベリル様は、恋敵の「プリンセス」に対して、とくかくベリル様なりの『真っ向勝負』で挑んでおり、単に『支配欲だけで人をモノ扱いする』原作・アニメのクイン・ベリルとは、明らかに違うんですな。

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       こちらは黒木ミオ…。

       ナンか、車の中でモノスゴイ顔しちゃってます…(←まるで車酔いしちゃったみたいです…今にも吐きそうです…)。黒木ミオは、Act.29でも、うさぎちゃんが地場衛の話をしてるのを聞いてた時、ベリル様の嫉妬によってソフトクリームをぐしゃっ!とつぶしてましたが、時々、こうやってベリル様の意識と一体化する瞬間があるんですよね。そのシステムについては不明ですが、いずれにせよ、これはまさしく、たった今、ベリル様から遠隔操作で、『エンディミオンがプリンセスの所に行ってないか、今すぐ調べよっ!』と、新たな指令が届いたんでしょうな。

       さて、Act.29、30で鮮烈なデビューを飾った黒木ミオさんですが、前回は、まこちゃん主演のため一休みでしたね。で、黒木ミオ絡みのエピソードで忘れてはならないのは、ナンと言っても彼女の目的とその手段です。黒木ミオと言うのは、ベリル様がプリンセスに嫉妬して、ただ単にうさぎちゃんをイジメるために派遣された訳じゃありません。そんな事をしたところで、世界征服の野望のために一体ナンの得があると言うのでしょうか? 実写版のベリル様は、もちろん、そんな低次元なお方ではございません。繰り返しになりますが、黒木ミオの目的は、「幻の銀水晶を手に入れる」事です。そしてその手段は、「プリンセスのが幻の銀水晶のカケラになる」のだから、それを取り出すために『プリンセスを泣かせよう』として、あの手この手でイジメ倒す事です(↓)

1.       で、その手始めとして、まず体育の授業でうさぎちゃんを狙い撃ちし、挙句の果てに『スネゲリ』まで食らわして肉体的に苛め抜いた訳ですが、ご覧の通り、うさぎちゃんは涙どころか『泣き言』一つ言いませんでした。

2.       で、お次は公園に呼び出して、泣き落としでもって友達を装い、「ねえ? うさぎちゃん、好きな人いる?」「どんな人?」と、エンディミオンの事を思い出させて泣かせようとしますが、これは途中でベリル様の嫉妬が介入して頓挫してしまいます。

3.       で、お次は妖魔を出現させて、「怪物が暴れてる時に、ケガした人放っておいて自分だけ逃げた」などと濡れ衣を着せて、クラスメイト達から孤立させる作戦に出ますが、これも、なるちゃん、亜美ちゃんと言う存在があったため孤立させ切れずに失敗します(←だから黒木ミオは、自分を問い詰めに来たなるちゃんに『腹痛ビーム』を食らわして報復行為をしたんです。黒木ミオと言うのは、自分の邪魔をした相手には、借りを返さずにはおれない性格なんですな)。

4.       で、お次は、美奈子に怪しまれたため、彼女も一緒に陥れようとニセ・ライブを企画しますが(←ここにも、美奈子への報復の意味が含まれてます)、これも、美奈子自身の機転により阻止されます。

5.       で、その失敗をフォローするため、ジェダイトくんがそのライブの邪魔をさせようと、急遽妖魔を派遣しますが、これはうさぎちゃん自身の機転によって阻止されます。

       これだけやっても、結局、うさぎちゃんは涙一つ流しませんでした…。これらのイジメは、あくまでも『涙を流させる』ための手段でしかなく、目的ではありません。目的はあくまでも、「幻の銀水晶を手に入れる」事です(←もっとも、ベリル様的には一石二鳥な話ではありますけどね)。さて、今回は、ここにエンディミオンが絡んでくるため、少々ややこしくはなりますが、しかし今回もやはり、黒木ミオの目的は今までと一緒です。で、ワシ自身、この基本事項をもう一度よく踏まえておかないと、今回のエピソードは謎だらけになってしまうので、敢えて、ここでちょっと、過去のおさらいをしておきました。

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       うさぎちゃんの下校シーン…(←昨日の今日ですから、月曜ですかね?)。

       うさぎちゃんは、ロンドン旅行のパンフレットを眺めながら歩いております…「…高い…」(←118,800円〜254,800円」ですか?)。

       でも、こんなモン見てタメ息ついてるくらいだから、当然パスポートくらい持ってるんでしょうね?(←ルナカラの年間パスポートじゃダメなんですよ〜っ!)。Act.29で、うさママは新婚旅行はロンドンって言ってましたから、両親は当然パスポートを持ってた訳ですし、うさパパは記者をやってますから、もちろん海外出張に備えて今現在も持ってるでしょうからねぇ…。こんな夫婦ですから、子供達を一度や二度海外旅行に連れてってたとしても、不思議じゃないですもんね。

       ちなみに、このパンフレットには、「セント・フォード航空で行く!!」と書いてありますな…。ちなみに地場衛が留学した大学は「セントフォード大学」なので、「セント」「フォード」が単語で区切られてるという違いはありますが、この二つには何か共通点があるんでしょうか? ちなみに、イギリスに実在する「オックスフォード大学」「ブラッドフォード大学」も地名由来ですけど、「セントフォード大学」はロンドンにあるはずなので、架空の地名と言う事でもないでしょうからねぇ…ひょっとして、日本の日下財閥と業務提携かナンかしてるイギリスの大財閥かナンかでしょうか?(←って、ンなコトどーでもいいか…)。

       ※ ちなみに、実写版の「セントフォード大学」の校章は、実在する「オックスフォード大学」の校章を模しているので、一応、世界有数の名門大学と言う設定なんでしょうかね? ナンたって原作の設定では、地場衛が通ってた高校と言うのは、水野亜美ですら「スゴイわね カレ あの 偏差値九十 超進学校 元麻布高校のセーフクよ エリート!」(←「美少女戦士セーラームーン (2) (講談社コミックスなかよし)、及び「美少女戦士セーラームーン 1 新装版 (KCデラックス)より)と言うほどだそうですからな…。しかしチョット待てよ?…そうなると、実写版では、あの元基もそこに通ってたコトになってしまいますが…(←たぶん元基の場合は、まぐれで高校入試に受かっちゃって、だけど、ずっと卒業できずに留年してて、それで、ホントは年上なのに地場衛と「同級生」になっちゃってたのかもな…。だって、決して『タメ歳』とは言ってない訳だし…)。

 

       とそこへ、さっきの黒木ミオの車がやって来て、「うさぎちゃんっ! ナニしてんの?」と呼び止めます。「ミオちゃんっ」「旅行?」「うぅんっ、私のお小遣いじゃぜんぜん無理みたい…」「ふ〜ん…乗ってかないっ? 送ってくよっ」。うさぎちゃんは笑顔でうなずきます。

        ★  ★  ★  ★  

       黒木ミオの車中にて…。

       「そっかぁ…友達がロンドンで行方不明なんだ? 探しに行くの?」「…じっとしてらんなくて…でも、やっぱり遠すぎるんだよね…」「その友達って、前に言ってた好きな人でしょっ?」「えっ?!」「ただの友達ならそこまでしないよっ♪」「…私は、ただ…心配で…」

       ここで黒木ミオは、ベリル様とテレパシー交信します…「……『あー、あー、こちら黒木ミオ、こちら黒木ミオ、エンディミオンはプリンセスのところへは来ておりませんでした、ドーゾ…』。すると、ベリル様から、『よし、ならば、そのままいつもの仕事に取り掛かれ。作戦はジェダイトと相談してテキトーに決めよ…』。黒木ミオ:「…『御意っ!』……ロンドンなら行く方法あるよ♪」「えっ? ホントに?!」

       ここで一つ、話を整理しておくと、さっきベリル様は、『もしやエンディミオンが前世の記憶を取り戻し、プリンセスに会うため日本に帰ったのでは?』と言う事を懸念していた訳ですから、もしそうなら、ここでプリンセスをロンドンに行かせてしまえば、見事二人を行き違いにさせる事ができる訳です。つまり、我々視聴者に、ここで、「だから黒木ミオは、うさぎちゃんをロンドンに行かせるつもりなのでは?」と思わせる必要があるんですね。ところが、「しかしその裏では、実は全く逆の策略が巡らされていたのだった!」…と言うのが、今回の話の大筋な訳です。

       ちなみに、黒木ミオの車の中は、犬のぬいぐるみだらけですな(←※「スペシャル・アクト」のチャッピーは見当たりませんでしたが…)。

        ★  ★  ★  ★  

       と言う訳で、テレビ局に連れて来られたうさぎちゃん…。

       ロビーで、黒木ミオと二人でテーブルに座っております。「テレビ局なんて初めてだよ。でもここでどうやってロンドンに行けるの?」「すぐ分かるって!」「?…」。すると何やら出入り口の方できゃーきゃー騒ぐ声がします…「来たみたい」「え?」

       サングラスをした芸能人らしき若い男が、ファンから花束をもらってロビーに入って来ました(←手には、ピンクの風呂敷に包まれた四角い箱のような物も持ってます…これも今ファンから受け取った物なのでしょうか?)。うさぎちゃんは、こちらへ歩いて来た彼を見て思わず立ち上がり…「うわぁ…ホンモノのユウトだ…」。そのユウトなる人物は、黒木ミオに気付くと、サングラスを外して二人の方へやって来ます。黒木ミオが「ユウトっ♪」と手を振って立ち上がると、ユウトは、「おはよ」と返事して二人の前に立ち止まり、うさぎちゃんを見て「この子?」と聞きます。「うん」「…ふ〜ん……」

       ユウトは、うさぎちゃんの全身を下から上へ舐めるように見ます…「まあ、ありじゃない?…でさ、このあいだほら、連れて来た女の子いるじゃない○×△□…」(←このあと、よく聞き取れませんが、うさぎちゃんを無視して、黒木ミオと、ナニやら女の子の話をし始めます…)(←軽そうなヤツですな…)。「……」(←うさぎちゃんの背後の壁に、ユウト主演のドラマ「さまよえる月」のポスターが貼ってあるのが見えます…これ、共演の女優さんは、きっと実写版の女性スタッフさんのどなたかなんだろうなぁ…)。

 

 ★  ★  ★  ★   CMタイム― ★  ★  ★  ★  

 

       ユウトの楽屋にて…。

       「え?! 付き人?!」。黒木ミオ:「ユウトのやってるドラマのロケが、ロンドンであって、今夜行くんだよね?」(←そのドラマと言うのが「さまよえる月」なんですな。正に今回のエピソードを象徴するタイトルですな)。ユウトは、テーブルの上に置かれた『ペット持ち運び用のバッグ』から、犬を取り出して抱きかかえながら、「うん」「で、付き人になって、一緒に行っちゃえばいいってわけ」「!…でも、そんなコト…できるんですか…?」。ユウトはポケットから航空券を取り出して、それをヒラつかせながら、「オレのやるコトに反対するヤツはいない」(←エラソーなヤツですな…)。

       ナニげにこの航空券って、きちんと「TSUKINO/USAGI」って名前が入ってるんですなぁ…。めちゃめちゃ手回しがいいって言うか、要するにコレって、ダーク・キングダムが急遽発行した『ニセ航空券』なんでしょうなぁ…。

       ※ で、このペットの犬ですが、最初にユウトがテレビ局の正面入り口から入って来た時、彼は、この『ペット持ち運び用のバッグ』を持ってませんでした。これはおそらく、今、このシーンの最初に楽屋から出て行った警備員さんが、ここに運んでくれたものです。実は、このあとの展開で、ユウトが自分の車で局に来ていた事が分かりますから、つまり、ユウトは今日、局の正面玄関に自分の車で乗りつけ、警備員さんにその車を渡して地下駐車場に運ばせ、その際、車のキーと一緒に、この『ペット持ち運び用のバッグ』も楽屋に運んでくれと頼んでた事になります。しかし、普通こんな事はしません。普通なら、入り口にファンが群がってるのを見た時点で、騒ぎを避けるために、そのまま自分で地下駐車場まで運転して行くはずです。つまりユウトは、局の入り口に群がってるファンの間を、いかにも『スター然』として掻き分けて行きたい、そう言うタイプの芸能人って事なんですな(←それを『気取り』と取るか、『ファン・サービス』と取るか、その解釈は様々でしょうが…)。だからこそ、その際、ファンからプレゼントを受け取るのに手ぶらでいたかったのと、犬を騒ぎに巻き込んで吠えさせたくなかったのとで、『ペット持ち運び用のバッグ』を車に置いて来たんです。つまり何が言いたいかと言うと、このユウトと言う人物は、ナニげに自分のペットに対する配慮が行き届いてるって事なんですな。

       「ありがとうっ♪」。うさぎちゃんがそのチケットを受け取ろうと手を伸ばすと、ユウトはそれを引っ込め、「出発までギッチリ仕事が入ってんのっ。これは今日一日のギャラ」「あ、はいっ…!」「それとさぁ、その格好ナンとかなんない? いくらナンでも中学生にウロウロされちゃうとねぇ…」「あぁ、すぐ着替えますっ」

       ここで黒木ミオはソファから立ち上がり、「じゃあ、ガンバってね? あたしこのあと美奈子ちゃんと、歌番組の収録があるから」(←ってコラっ! いつから先輩を「ちゃん」付けしてんだよっ!)(←一応タメ歳だけど…)。「ああ、そうなんだ? ミオちゃんホントありがとう。美奈子ちゃんによろしくっ♪」

       ここで黒木ミオは、うさぎちゃんに近付いて耳打ちします…「彼、わがままだから、キゲン悪くさせないようにね、連れてってもらえなくなっちゃうよ」…だそうです。「うん…、わかった…」そのあと、黒木ミオとユウトが、意味ありげに目配せし合っております…どうやら、この二人はすでにグルのようなのですが…。

        ★  ★  ★  ★  

       テレビ局のトイレにて…。

       うさぎちゃんはケータイを開けると、ボタンをかちっ、ぴるんっぴるんっ、かしゃっ!と押して、いかにもスタッフさんっぽい服に変身します…「こんな感じかな?」(←髪型も、ポニーテールになってます)

       ちなみに今、ケータイ画面に変身前の衣裳の画像は出てませんでしたから(←ケータイ画面は、普段は鏡になってます)、前回ワシが立てた仮説が半分正しかった事が、これで証明されましたなっ♪(←言ってみるモンだ…)。

1.       たとえばコレ、Act.1で一番最初に変身ケータイを使った時は、モデルさんを直接写してそのままダイレクトに変身してました(←名付けて、『ダイレクト変身機能』)。で、その時の操作方法は、まず、一番上の『三日月ボタン』が変身ボタンらしいので、それを押し、すると、目の前のモデルさんがリアルタイムで画面に写り、もう一度『三日月ボタン』を押すと、そのモデルさんに変身します。で、おそらくこの時の画像データは、自動的にケータイに保存されるんじゃないでしょうかね? しかし、そうやって一度保存された画像データを再び画面上に呼び出すのは、また別の操作が必要なんですな。

2.       たとえば、次にAct.2で二度目に変身ケータイを使った時は、ルナカラで、「さっき道ですれ違った人カッコよかったからさ、これイイよぉ〜、なんにでも変身できるモンね!」と、予め保存されたデータから変身してました(←名付けて、『保存データ変身機能』。この時の操作方法は不明ですが、ただし、このケースでは、「さっき道ですれ違った人」の画像をケータイに取り込んだ時には、間違いなく『ダイレクト変身機能』は使っておらず、普通に写真を撮るようにしてデータだけを保存してた訳です

3.       で、今回のこのシーンで分かったのは、『保存データ変身機能』を使う場合の操作方法は、まず、変身ボタンの『三日月ボタン』『かちっ』と押し、次に衣裳ストックの番号を『ぴるんっぴるんっ!』と押し(←ちなみに今回のコレは、『衣裳ストック#42』でした)、最後にもう一度『三日月ボタン』『かしゃっ!』と押すと変身できるシステムになってました(←こんな簡単操作なら、ケータイを持ってないワシでも使えそうだ…)。なので、衣裳ストックの番号は、そこに何が保存されてるのか自分で覚えてないと、すぐに変身できないんですな。なので、Act.23でレイちゃんがマーズれい子の衣裳を画像で確認してたのは、これとはまた別の操作をしなければならない訳です(←名付けて、『画像呼び出し変身機能』。で、おそらく、それはちょっと手間がかかるので、緊急時に対応できないため普段はあまりやらないんでしょうな(←あとでデータ整理する時などには便利なので、はずせない機能ではあります)。

4.       これで、前回のまこちゃんのファッション・ショーが、『フタを開けるまでナニが出るか分からない』ものだった事の説明もつく訳ですな。

       うさぎちゃんは、洗面台の大きな鏡を見ながら、「…(心の声→)ルナ…、みんな…、ごめん…。私、どうしても行きたい。ナニかあったんなら、助けたいよ」。するとそこへ、他のスタッフの女性らしき人が来て、「ちょっとぉっ! ユウトさん呼んでるわよ? 犬がオシッコしちゃったって!」「すぐ行きますっ」。うさぎちゃんは、鏡に向かって「がんばろうっ」と気合を入れ、ぱんぱんっ!とホッペを叩いて、「ロンドン、ロンドン…、ロンドン…」と歩き出します…。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらクラウン…。

       「そっかぁ…地場衛が…。うさぎ…、よく我慢してるな…」(←みんな制服姿です)。ぬいぐるみルナ:「だって…無理しても、結局つらい思いするのは二人なのよ。そういう恋なの…」「…………」「…………」「…………」。ナンか…すっかりどんよりムードですな…。

       これ、まこちゃんは、地場衛がロンドンで行方不明になった話を、今ここで初めて知った訳ですから、昨日の日曜は結局クラウンに来なかった事になります。で、今ここでその話を聞いたと言う事は、今日は、元基はバイトが休みだった可能性が高いですな。なぜなら、いつものように元基が受付にいれば、元基の性格からして、土曜の『告白事件』がどうだろうと、「衛がロンドンで行方不明になってる」などと言う大事件を、元基がまこちゃんに話さないはずがないからです。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらうさぎちゃん…。

       ユウトの楽屋で、バケツと雑巾でもって、床の上の犬のオシッコを拭いております…。犬:『ケッ、ソレ、ホントはユウトがしたんだぜ…』

       すると、ソファにふんぞり返って台本を読んでたユウトが、「ロンドンにカレシいるんだって?」と話しかけてきます。「カレシじゃ、ないです…」「ふ〜ん…」

       ※ このユウトの何気ない会話も、不思議と言うか巧妙と言うか…。このような会話を普通にするのですから、これでは、ユウトが黒木ミオとグルなのは分かっていても、とても妖魔が取り憑いてるとは思えませんよねぇ…。

       そこへ、ドアがとんとんっ!とノックされ、スタッフさんが「失礼しまぁすっ!」と入って来ます…「ユウトさんっ、本番ですっ」(←この時、壁の時計が12時10分前を指してます…ってアレ? 今日は平日で、みんな学校に行ってましたけど…?)。ユウトは犬を抱きかかえたまま「はぃっす!」と立ち上がり、うさぎちゃんも「ロンドン、ロンドン…」と付いて行きます(←この時、楽屋の鏡に反射して映ってる、さっきと同じ時計が、12時5分前に進んでます…つまりユウトは、ソファから立ち上がるのに5分もの時間を費やしております…ってンなバカなっ!)。

        ★  ★  ★  ★  

       生放送のスタジオにて…。

       ユウトが「おはようございまぁす」と入って来ると、スタッフさん達が一斉に「おはようございまぁすっ!」と返事をします。ユウトは犬をうさぎちゃんに渡すと、「生放送だから、気をつけておいてねっ」と犬を指差します。「あ、はいっ」「…『よし』(←みたいにセットへ向かう)。うさぎちゃんは抱きかかえた犬に向かって、「生放送だってっ、気をつけるんだよ?」と話しかけます。犬:『ケッ、知るかよ…』

        ★  ★  ★  ★  

       …で、いよいよ「生放送」の本番スタートです。「5秒前…、4…、3…、(2)…、(1)…」びーーーーっ!(←本番スタート)。

       小林さん:「こばやしっ」(←宮尾すすむ風に)井林さん:「いばやしの」(←ホッペを両手で指差す)二人で:「恋の、ぶっちゃけトォ〜〜〜〜ク…」

       …う〜む…ワシの睨んだところでは、この「こばやし・いばやし」と言うのは、女芸人コンビさんだな…。で、進行役を勤める方が『ツッコミ』なので、「こばやし」『ツッコミ』で、「いばやし」『ボケ』だな…。で、「こばやし」「こ」と、「いばやし」「い」を足して、「恋(こ・い)に引っかけて番組タイトルにしてるんだな…。

       小林さん:「どうもっ、こんにちはっ、さ、今日のぶっちゃけトークのゲストは、今、恋人にしたい男ナンバーワンの、ユウトさんでぇ〜すっ!」二人で:「いぇ〜〜いっ!(←ぱちぱちぱち…)…よろしくお願いしますっ」。ユウト:「お願いします…」「かっこいいわねぇ〜」(←この時、セットの中に飾ってある壁時計が12時ちょうどを指してて、秒針もちゃんと動いてますから、さっきの楽屋の時計と考え合わせても、この番組がお昼の生番組である事が分かります…ってンなバカなっ! 今日は平日で、うさぎちゃんも亜美ちゃんもレイちゃんもまこちゃんも、みんなちゃんと学校に行ってたんじゃないのか?!)。

       で、本番が始まると、うさぎちゃんは、その様子に見とれたのか、ぼーっと気をとられてましたが、ふと見ると、抱きかかえていたはずの犬が手の上にいません…「?…『どこ行った?』みたいにきょろきょろすると、ナンと、犬が、本番中のユウトに向かって歩いて行ってます。「あっ!」…うさぎちゃんは慌てて犬を捕まえに行きますが…。

       小林さん:「さて、歌にドラマに大活躍のユ、ユウトさん…なんですけど…」。うさぎちゃんは、その本番中のセットの中まで飛び込んでしまい、犬を抱きかかえながら、「もぉ〜ダメでしょ?」。犬:「わんっ!…『テメ、放せ』「生放送なんだから気をつけきゃっ」。犬:「わんっ!…『腹減ってんだよっ』「わかった?」。犬:「わんっ!…『おやつの時間なんだよぉ…!』「じっとしてなきゃあ」…と、ナンと思いっきりカメラに写り込んでしまいます。出演者とスタッフさん達が必死で合図しますが、うさぎちゃんは犬にかまけてて全く気付きません。

       うさぎちゃんは、ようやく周りの視線に気付きますが、いまいち状況を把握しておらず、取り敢えずその場で「!…はっ!…すいませんっ! ごめんなさいっ! すいません…!」とぺこぺこ謝り始めてしまい、一向に画面からハケようとしません。

        ★  ★  ★  ★  

       その頃、月野邸では…。

       うさママが、たまたまそのテレビを見ながら、大福を食べながらお茶しており、「ん?!…はっ!?…うさぎっ!? やっ! ちょっと! うさぎ、ママ、ママ、ママ! 育子、育子、呼んで呼んでっ! あっ、やっ、オシャレしちゃってテレビ用にやっはっはっ♪」(←この番組って、お昼と言うよりは、ナニげに3時とか、その辺の時間設定っぽくもありますが…)。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらは、別のスタジオで、歌番組のために準備中の美奈子…。

       どうやら、こちらでも、そのテレビがついてたらしく、それを見た美奈子が思わず「!…」と立ち上がります。そこには黒木ミオも一緒にいて、ヘアメイクさんに髪を整えてもらいながら、「あ〜、うさぎちゃん頑張ってる〜っ♪」(←無邪気に手なんか振っちゃってます)美奈子は黒木ミオに向かって、「またナニか仕掛けたわね!」(←テレビ画面の中では、うさぎちゃんがようやくスタッフさんに連れ出されてる様子が映されております…っておせぇよっ!

       「えぇっ? うさぎちゃんに頼まれたんで、ユウトに紹介しただけですよっ、どうしてもロンドンに行きたいって!」。美奈子はスタッフさんに向かって、「すいません、ちょっと休憩お願いします!」と言うと、急いでスタジオを出て行きます。スタッフさん:「はい了解っ!」。それを見送って黒木ミオは、「…フンッ…」と鼻で笑っております。

       黒木ミオは、前々回、『ニセ・ライブ作戦』を美奈子に阻止されたので、やはり、どうしても美奈子にその借りを返してやりたくて仕方ないみたいですな…。なぜなら、今回はこうやって、最初から自分の手の内を堂々と美奈子にさらしちゃって、明らかに美奈子を挑発してますからね。で、今回はどうして、黒木ミオは、直接自分で手をくださず、わざわざユウトにその肩代わりをさせてるのでしょうか? それは、今回の作戦が、過去のやり方とは、その手段を変えてきてるからなんですね。たとえば、今までと同じように、今回も黒木ミオが直接うさぎちゃんをイジメるようにしてしまうと、過去のパターンから、黒木ミオが最初からうさぎちゃんをロンドンに行かせるつもりがないのが、誰の目にも分かりきってしまう訳です。今回は、実はうさぎちゃんをイジメると言うのは、その手段ではないんですな。今回ユウトがやってる事は、今まで黒木ミオがやって来たイジメとは全く関係ありません。単なるわがまま芸能人の日常に、ただうさぎちゃんを巻き込んでるだけです。だからこそ、ユウトのイジメが『ちゃんとしたイジメ』になってないんです。今までのように、イジメそのものが手段であるなら、今までの黒木ミオ以上にイジメなければ、とうていうさぎちゃんを泣かせる事など不可能なのは、もう分かりきってるんですから。

        ★  ★  ★  ★  

       こちらは、うさぎちゃん…。

       犬を抱きかかえながら、「本当にすいませんっ!」と平謝りしております。小林さんは腰に手を当てて、「信じらんないわ、もぉ〜、はぁ〜…」「ごめんなさい、ごめんなさい、すいません…ごめんなさい…」。関係者さん達が、厳しい顔で居並ぶ前で、うさぎちゃんはとにかく頭を下げまくっております。

       するとここで、ナンとユウトが、うさぎちゃんの失態に顔をしかめるプロデューサーさんの背後に回って、肩をもみもみしながら、「もういいっしょぉ、森ピー…」とか言って、なだめてくれちゃっております…(←な、ナンだ?! 一体お前はいいヤツなのか悪いヤツなのか?! どっちなんだよ?!)。すると「森ピー」さんは渋い表情で、「まあ、しょうがないか…『他ならぬユウトくんがそう言うんなら…』(←みたいな感じ?)に、みんなを取り成します。小林さん:「はい…、じゃがんばろっ、ねっ!」と言って、みんなは持ち場に戻って行きます。

       ※ これは、一番最初に楽屋でユウトが、うさぎちゃんに向かって航空券をヒラつかせながら、「オレのやるコトに反対するヤツはいない」と言ったのが本当である事を、『現場の最高責任者であるプロデューサー』すら思い通りにしてみせる事で証明して見せ、『だからオレの言う通りにしてればロンドンにいけるぜ』と思わせるためなんですな。と言うのも、ここで、仮にユウトが悪役に徹しきってしまうと、過去の黒木ミオのイジメ同様、最初からうさぎちゃんをロンドンに行かせるつもりがない事があからさまになりすぎてしまい、見てる我々が、うさぎちゃんの抱く、『ここで頑張ればロンドンに行ける…!』と言う期待感を共有できなくなってしまうんですな。今回のポイントは、それを『期待させるコト』にこそあるんです。

        ★  ★  ★  ★  

       ここでユウトは、うさぎちゃんのところへ行き、助けてやった見返りに罰でも与えるかのように、冷たい調子で、「ちょっとさぁ、コイツのおやつ買ってきてよっ」「はいっ!」(←この笑顔がいじらしいですな…)「ゴンタ屋の自然食ね(←ここでユウトは、うさぎちゃんから犬を抱き取ります…犬:『ケッ、どーでもいいけど、ペットに名前ぐらい付けてくれよ…』。…走れば15分ぐらいだから」(←お尻のポケットから自分の財布を出し、ぽんっ!と手渡します)「はい」「走れよっ」「はいっ!…ロンドン、ロンドン……ロンドン…」

       で、このあとユウトは、自分の犬を、ナンと、「森ピー」さんに抱き渡してるんですね。

       で、ここでもユウトは、ちゃんと自分の財布をうさぎちゃんに手渡してるんですよね。イジメが目的なら、普通、うさぎちゃんにお金を立て替えさせて、結局自分じゃ払わないはずです。でも、それは目的ではないので、こうして自分の財布をきっちりと渡す訳なんですな(←それにこの「おやつ」代は、仕事とは関係ない個人的な出費なので、経費では落ちませんからね。それに、ユウトが「走れば15分ぐらい」だと知ってると言う事は、これ、ユウトは普段から、自分の付き人に同じ事を命令してるって事なんですな。つまり、ユウトと言う芸能人は、黒木ミオが絡む絡まないに関わらず、基本的に、元々こう言うタイプの人間なんですね。だから、黒木ミオが最初にうさぎちゃんに言った、「彼、わがままだから、キゲン悪くさせないようにね、連れてってもらえなくなっちゃうよ」と言うのは、本当に言葉通り、心からの忠告だったんでしょうなぁ…。

       で、どうしてユウトが、このタイミングで「おやつ」を買いに行かせたのかと言えば、それは、犬が本番中のユウトのところへ来たのが、『犬がお腹を空かせてるからだ』と、ユウトが分かったからなんですな。でも、それを言ってしまうと、『悪いのはうさぎちゃんではなく、自分がうっかりしてたからだ』と言うのがみんなに分かってしまうので、あくまでも彼女に失敗をなすりつけようとして、あたかも罰を与えるみたいな言い方で「おやつ」を買いに行かせたんです。「森ピー」に取り成したのも、もう一つにはそれがあるからで、ユウトは、一刻も早く犬に「おやつ」をやりたかったんですね。なので、これも、明らかにイジメとは意味が違う訳で、ユウトは、あくまでも自己防衛のために、単に意地の悪さを発揮してるだけであって、別に相手を陥れる事が目的ではないんです(←※それはそうと、「おやつ」って事は、やっぱりこの番組はお昼じゃなくて3時の番組だったんじゃないのかなぁ…。もしそうなら、最初にうさぎちゃん達が制服だったのも、うさママが大福でお茶してたのも、全部辻褄が合うじゃないですか…)。

        ★  ★  ★  ★  

       「ロンドン、ロンドン……ロンドン…」と、テレビ局の廊下をひた走るうさぎちゃんの前に、美奈子が出て来ます。「美奈子ちゃんっ!」「アナタこんな所でナニしてるの? 黒木ミオにナンて言われたの?」「…ちょっと、事情があって…」「すぐ帰った方がいいわ。ユウトには私が言っておくから」「ダメっ、…私、どうしても……ごめんなさいっ! 急いでるからっ!」。うさぎちゃんは、大好きなアイドル美奈子の忠告も無視して走り出します…。

       「……アルテミィ〜ス?」ぎぃ〜〜っ…! 「いっ、い、いっ…!」…アルテミィ〜スが重い扉を押し開けて出て来ました…(←めっちゃ怪力…)。「マーズ達に知らせて!」「ぅわかったっ!…『て言うか、ナンで自分でケータイかけないんだよ…』ぎぃ〜〜ばたんっ!…最近、すっかりパシリ化してるアルテミィ〜スなのでした…。「……『なぜ急に、あんなにロンドンに行きたがってるの?』

        ★  ★  ★  ★  

       うさぎちゃんは、局を出て、外の歩道を走っております…。

       ユウトの財布を両手で抱きかかえるようにして、「…(心の声→)私…、どうしても…!」

       横断歩道まで来ると、信号が赤なので、「…『もうっ! 急いでるのにぃ…!』みたいに、イライラそわそわと信号待ちをします。すると、横で、ナニかがしゃっ!とモノが落ちる音がします。「バカ…!」「!?…」。うさぎちゃんが横を見ると、若いカップルの男の子が、女の子のバッグから落ちてしまった小物入れやハンカチ等を拾ってあげながら、「ナニやってんだよ、もぉ〜…!」と言ってます。「……」「だいじょぶかぁ?」「うん…」。うさぎちゃんはその様子を見て、Act.24の出来事を思い出します(↓)

     ききぃ〜っ!(←車が急ブレーキをかけた音)…地場衛がとっさに駆け出して、うさぎちゃんを押し倒すようにして歩道に戻します。「バカっ! 赤だろうっ!」「…バカってナニよっ!」「!…」「!…」

       「……」。うさぎちゃんが物思いに耽ってると、信号機の自動音声が、「青になりました…」と告げたので、うさぎちゃんは走り出します…「…(心の声→)会いたいっ!」

        ★  ★  ★  ★  

       で、あっという間にクラウンに到着した快足アルテミィ〜ス。「うさぎが?!」「ロンドンに行くためらしいんだが…、そうか、地場衛が…『ロンドンで行方不明に…』。ルナっ、あの二人を近づけてはダメだっ」(←真顔バージョン)「わかってるわ…。うさぎちゃんも納得したと思ってたのに…」(←困ったバージョン)

       ルナは、「うさぎちゃんも納得したと思ってた」から、この『地場衛・行方不明事件』をアルテミィ〜ス・サイドには知らせなかったんですな。

       「うさぎちゃん…ホントに好きなんだと思う…」「でも、行かせる訳にはいかないわ」「もっと悲しませるコトになるってコトだろ?」「ああ、…この星が、滅びないためでもある…」

       ここでの三者三様のリアクションは、それぞれ「らしい」ですな…。

1.       亜美ちゃんは、相変わらず『前世』の事なんかどうでもよくて、あくまでも『現世』のうさぎちゃん目線でしかモノを考えてません。

2.       レイちゃんは、今現在は、特に『前世』とか『現世』とかの判断基準ではなく、Act.3でセーラーマーズに覚醒してからずっとそうだったように、あくまでも戦士の自覚として、それに則って物事を判断してますから、これもレイちゃんらしく一貫してます。

3.       一方まこちゃんは、以前はあれほど『タキシード仮面=地場衛』を毛嫌いしてたのに、『プリンセス覚醒』直後のAct.26では、彼が前世のエンディミオンだったと知って考えを変え、うさぎちゃんを彼に会わせてあげようと空港まで連れてってました。しかし、前回自分が前世を受け入れる方向に考えを変えたため、またしても考えが変わり、今度はヴィーナス寄りに考えを変えてしまってます。

 

 ★  ★  ★  ★   CMタイム― ★  ★  ★  ★  

 

       ユウトの楽屋にて…。

       テーブルの上には、「自然食のゴンタ屋」と書かれた紙袋が置いてあります…。犬がおやつを食べてる横で、うさぎちゃんは、床に手を突いて「はぁ、はぁ、はぁ…」と肩で息をしております。

       ユウトは、番組用の衣裳から私服に着替えが済んでおり、ただ黙ってソファに座って、自分の手の指輪を眺めておりましたが、指でぱちんと指輪を弾くと、「じゃ、そろそろ行こっかぁ」と言いながらサングラスをかけ、「飛行機の時間だし…」と言って車のキーを持って立ち上がり、さっさと楽屋を出て行きます。「あ、はいっ!」。うさぎちゃんは「ロンドン、ロンドン…、ロンドン、ロンドン…」と言いながら、いそいそと『ペット持ち運び用のバッグ』を準備します…。犬:『おい、ナンだよ、まだ食い終わってねーよ…』

       このシーンにおける、ユウトの、犬に対する愛情のなさは、ナニげに気になりますねぇ…。彼は、最初に局入りした時は、ファンの騒ぎに犬を巻き込まないよう車に置いて来たり、生放送の本番の前は、楽屋から自ら犬を抱きかかえてスタジオに向かってて、本番が始まって以降も、犬がお腹を空かせてる事にさえ気配りがあったのに、今、ここでは完全に犬の事など無視してるんです。なので、ワシが睨んだところでは、ひょっとすると、うさぎちゃんが「ゴンタ屋」に走ってる最中に、ユウトに妖魔が取り憑いてた可能性も考えられますなぁ…。

        ★  ★  ★  ★  

       地下駐車場にて…。

       ユウトは、キーホルダーを指でぐるぐる回しながら歩いております。ユウトが自分の赤いオープン・カーのドアを開けると(←車に興味ないから知らんけど、これは左ハンドルなので外車のようですな)、うさぎちゃんが反対側に回り込んで、後部座席に『ペット持ち運び用のバッグ』を置きます(←自分のひざに抱えなくていいんですか?)。

       ここでも、ユウトは、うさぎちゃんが犬を後部座席に置いた事に対して、ナンの関心も示してません。

       するとそこへ、美奈子が「待ってっ!」と駆けつけます。「美奈子ちゃん?!」「行ってはダメっ!」。するとうさぎちゃんは、「?…『え? どうして美奈子ちゃんがそんなコトを…?』みたいに、不思議そうと言うか、やや怪訝そうな顔をします。

       ここで美奈子は、歌番組の衣裳から私服に着替えてますから、番組収録の仕事も終わり、アルテミィ〜スがクラウンから持ち帰った『地場衛・行方不明事件』の情報を受けて、『プリンセスをエンディミオンに会わせる訳にはいかない』と、こうしてうさぎちゃんの『ロンドン行き』を阻止するために出て来た訳なのですが…

       そして、その美奈子の腕を、いきなり出て来た黒木ミオががっ!と掴んで引っ張り、「うさぎちゃんっ、今のうちに早くっ!」「…」「うさぎっ、ダメっ!」(←黒木ミオは物凄い怪力のようですな…あの美奈子ですら身動きが取れません…

       …ところが、美奈子は、自分の正体を隠した『アイドル愛野美奈子』の状態ですから、ここで「行ってはダメ」なんて事を『ファン月野うさぎ』に言ってみたところで、なぜ「行ってはダメ」なのかその理由が説明できない以上、とうてい説得する手立てなどない訳です。たとえばAct.7のセーラーVとセーラームーンの時みたいに、「追ってはダメ!」と言って「え?…どういうこと?」と聞かれても、「危険なのよ、彼は敵だと思いなさい」なんて事すら言えない訳です。そこが、このシーンにおける美奈子の辛いところな訳です(←だからこそ、その口惜しさと歯がゆさのせいで、感情的になって思わず「うさぎっ」と呼び捨てにしてしまうんですね。前々回は⇒(「あの、私のコトぉ、覚えてますか?」「うさぎちゃんでしょ?」)でしたからね。あの時もそうでしたが、今回も、うさぎちゃんは美奈子の忠告を聞かない結果に終わってますが、いずれも、『アイドル愛野美奈子』『ファン月野うさぎ』の状態では、「ヴィーナスとプリンセス」としての立場でセーラー業務の話ができないからなんですな。これでは、相手を説得できるはずなんかないんです)。

       なので、その結果、当然うさぎちゃんは、「美奈子ちゃんっ、ごめんねっ!」と言って車に乗り込んでしまう訳です。しかし美奈子は、『アイドル愛野美奈子』として、それを、ただ黙って見送るしかない訳です。そして、一方の黒木ミオは、『してやったり』みたいにほくそ笑んでユウトとアイ・コンタクトを取り、そしてユウトは車を出します。うさぎちゃんは、とうとう、美奈子の制止も振り切って、行ってしまいました。

       つまり、今回の黒木ミオが、初めから自分の手の内を美奈子にさらしていたのは、こうやって、美奈子に対して前々回の仕返しをしてやりたかったからなんですな。

       ここで美奈子は、黒木ミオの腕を振り解き、「アナタ、まさか!?」「はい?!」(←すっとぼけっ!)。両者が睨み合ってると、そこに警備員さんがやって来て、「どうか、しましたか?」と声をかけます。すると黒木ミオは、「ナンでもっ…美奈子ちゃんとぶつかっただけです、ネっ」と、馴れ馴れしく美奈子の腕にすがり付きます。「……」。美奈子は、そんな黒木ミオを睨みつけると、その場を立ち去ります。

       黒木ミオは、美奈子が行ってしまうと、「…心配しなくたって、ロンドンなんか行かないのに…フッ!」と言います…。

       そうなのだ…、黒木ミオは、最初からうさぎちゃんをロンドンに行かせるつもりなどなかったのである。それはなぜか?

1.       ベリル様は、ゾイサイトを問い詰めた際、『もしやエンディミオンが前世の記憶を取り戻し、プリンセスに会うため日本に帰ったのでは?』と思った。

2.       それで急遽、黒木ミオにそれを調べさようと指令を送り、黒木ミオは、うさぎちゃんを車に乗せた。

3.       しかし、エンディミオンはプリンセスのところへは行っていない…つまりまだロンドンにいる…つまり記憶も戻ってない…つまり「行方不明」と言うのは本当らしい…だからこそプリンセスはロンドンへ彼を探しに行こうとしている…と言うのが分かる。

4.       実はこの時点で、ベリル様個人の心配事は、ひとまず解決してるんですな。なぜなら、仮に『エンディミオンが前世の記憶を取り戻してプリンセスに会うため日本に帰った』と考えたのなら、逆にうさぎちゃんをロンドンに行かせてしまうはずだからです。なぜなら、それで二人を行き違いにさせる事ができる訳ですからね。

5.       なので、エンディミオンがまだロンドンにいるのであれば、その上で、それならそれで、『プリンセスをロンドンに行かせてあげない』と言う、今回の黒木ミオの作戦が始まる訳なんですね。

       要するに、面白い事に、黒木ミオも美奈子も、結局と言う点では、全く同じ目的意識を持って動いてた事になる訳です。だから黒木ミオ目線では、今回に限っては美奈子の邪魔も邪魔にはなり得ないので、最初から自分の手の内を美奈子にさらせる訳なんですな。しかしそうなると、根本的な問題として、そもそも、同じ目的意識を持った両者が対立する事自体、始めから不毛になるはずですよね? ところが、ここで問題なのは、美奈子の目的は『行かせない』事そのものにあるのですが、実は、一方の黒木ミオの本当の目的が、『行かせない』事そのものにあるのではなく、『行けると期待させてそれを裏切る』事にあったのだと言う点なんですね。だからこそ、『行けると期待させる』と言う下準備の段階において、そこで美奈子と対立して競う事ができ、その結果、『うさぎちゃんは、愛野美奈子よりもあたしの方を選んだ』と誇示してみせて、美奈子のプライドを傷つける事もできたんです。

       それでは、なぜ、黒木ミオの目的が、『行けると期待させてそれを裏切る』事にあったのか?

       それは、何度でも言いますが、そもそも黒木ミオの本来の目的が、「幻の銀水晶を手に入れる」事にあり、そのために『プリンセスを泣かす』事を目指しているからです。ところが、Act.29と30において、このプリンセスを泣かせるのは容易ではない事が分かったので、今回はついに、『地場衛・行方不明事件』を利用して、エンディミオン絡みでそれをする作戦に出た訳なんですな(←回を追うごとに、着実に進歩してるジェダイトくんなのでありました…)。だからこそ、わがままタレントのユウトのわがままが、黒木ミオが過去にしてきたようなイジメであっては意味がないんです。この程度の事でこのプリンセスが泣くはずがない事ぐらい、もう嫌と言うほど思い知らされてるんですからね。で、『ロンドンに行けると期待させる』ためには、うさぎちゃんに、ある程度、このユウトと言う人間を信用させなければならない訳です。そのためには、『こんな嫌なヤツがホントにロンドンに行かせてくれるの?』なんて思わせてしまっては元も子もないんですな。それでは、見てる我々も含めて、単に『やっぱりね…』で終わってしまうからです。あくまでも、行けると期待させて頑張らせておいて、その上で、最後の最後にそれを裏切らなければ、うさぎちゃんの受ける失望が最大限のモノにはならないんですね。

       だからこそ、次のシーンで、最後の最後に、ユウトがもっとも嫌なヤツに見えるようにしなければならない訳なんですな。なので、ワシが睨んだところでは、やはり、妖魔がユウトに取り憑いたのは、実はうさぎちゃんが「ゴンタ屋」に走ってる最中だった可能性が高いのではないだろうか?と言う事なんですな…。つまり、それ以前のユウトは「素」のユウトで、黒木ミオはその『わがままさ』が気に入ったので、その彼を今回の作戦に利用しただけなのでは?と…。で、その際、『この子を付き人にしてロンドンに連れてってくれたら、誰か女の子を紹介してあげるから』みたいな取引をしてたとか…(←ナンか、一番最初のロビーでの黒木ミオとの世間話がそれを匂わせてるっぽいんだよなぁ…アレって、明らかに以前からプライベートでも付き合いのある会話だもんなぁ…だから、その直後の楽屋での目配せも、ユウトはイマイチ妖魔っぽくなくて、むしろそれっぽいニュアンスを感じなくもないんだよなぁ…)(←まあ、コレについては確信はありませんが…)。

       もう一つの仮説として考えられるのは、たとえば、今までのエピソードの中で、妖魔が人間に取り憑いていた例を全て検証し直してみると、妖魔が人間に取り憑いてる時には、実は二つのパターンがあったんですな(↓)

     一つは、完全に妖魔の意識が支配していて、宿主の人間の記憶や意識が一切ないパターン。

Act.1:

『なるママ妖魔』

自分に娘がいる事すら知らなかった。

Act.4:

『サボテン妖魔』

顔色も緑に変わっており、桜木財閥の令嬢としての意識は持ってなかった。

Act.7:

『ワラ忍者妖魔』

シャックリは継続していたが、明らかに高井くんの意識は持ってなかった。

Act.12:

『社長さん妖魔』

スケジュール帳を廊下に落としたまま拾おうともせず、事務所の社長としての意識を全く持ってなかった。

     もう一つは、宿主の人間として、その職業をきちんとこなしているパターン。

Act.2:

『埴輪妖魔』

元は埴輪のクセに、塾の先生として、ちゃんと数学の授業を教えていた。

Act.6:

『タケル妖魔』

妖魔に取り憑かれてから徐々に様子が怪しくなっていったが、元はヘビ使いのクセに、ちゃんとストリートバスケを上手にやっていた。

Act.15:

『おまわりさん妖魔』

一応、ちゃんとおまわりさんらしい事は言っていた。

Act.18:

『エリマキトカゲ妖魔』

神父さんとして、ちゃんとミサの業務をこなしていた(←ナニ言ってんのかよく分からなかったけど…)。

     つまり、この二つのパターンを総合すると、妖魔が取り憑いていても、宿主の人間の意識が支配している間は、その宿主として普通に当人の職業をこなすが、一旦妖魔の意識が支配して『ダーク業務』を遂行する段になると、宿主の記憶や意識が全くなくなる。そして、そのスイッチの『オン・オフ』は、背後で四天王が操っている(←たぶん)。仮にユウトに妖魔が取り憑いたのがいつであれ、この『オン・オフ』の切り替えによって、『素のユウト』『妖魔の意識に乗っ取られたユウト』が、「ゴンタ屋」の前後で切り替わっていた可能性も高いと考えられる。

     ※ いずれにせよ、人間に取り憑くパターンの妖魔はコレが最後で、次回以降は、もっぱら地中発生の妖魔ばかりになり、ダーク・キングダム支配下の妖魔自体が、もうAct.39、44、47の3匹しか出てきません。

        ★  ★  ★  ★  

       波止場にて…。

       ユウトの車が、どう言う訳か、海の見える波止場にやって来て、そこで止まります。うさぎちゃんは、到着したのだと思ってシートベルトを外し、周りを見回してます…。ユウトもまた、大きなアクビをしながらシートベルトを外します…。

       うさぎちゃんが、「…あの? 船で行くんですか?」と聞くと、「フッ、まさかぁ…」…ユウトはサングラスを外すと、「なぁ〜んかロンドン行くのやんなっちゃったなぁ〜」とか言い出します。「!?…『え?』

       ここでユウトは、車のサンバイザーに挟んでおいたチケットを取り、「チケット、捨てちゃおっか?」などと言いつつ、それをヒラヒラさせながら、車の外に捨てようとします。「ダメっ! 待ってぇ! 待ってっ!」「あららら、落ちちゃう落ちちゃうちゃうちゃう…」「ちょっとぉ!」「ほらっ、落ちちゃうっ、あ、あ〜ぁ…」(←コンノヤロ〜っ! これはもう、心置きなく嫌なヤロウだテメェはっ!)。ユウトは、ついにチケットを手から離してしまいます。「!…ひどいっ!」。うさぎちゃんは車から降り、風に飛ばされたチケットを追います。チケットは、海に落ちる寸前で浮き輪に引っかかってて、うさぎちゃんは、かがみ込んで、それに懸命に手を伸ばします…「うっ、…もう少し…!」「あとちょっと…!」

       すると、それを見て、ユウトがドアを開けて車を降ります。すると、ユウトの体から妖魔が現れて離脱し、ユウトは意識を失って車のシートに倒れ込みます(←この妖魔は、『茶色妖魔』と名付けよう)。

       うさぎちゃんは、そんな事とも知らず、一生懸命チケットに手を伸ばしております…「お願い…もうちょっと…!」。その背後に、『茶色妖魔』が迫って来ます…。

       「あ、…♪」。やっと手が届いてチケットを取ったその瞬間、妖魔がうさぎちゃんの背後から襲いかかります…「!」。うさぎちゃんは必死で逃げようとしますが、妖魔につかまってしまいます…「ナンで妖魔がっ?!」。さぎちゃんは背後から両手を押さえられて振り回され、その拍子にチケットが手から落ちてしまいます…「あっ!…」チケットは風に飛ばされ、うさぎちゃんは羽交い締めにされてしまいます…「…チケット!…うっ…!」。チケットは、海に落ちる一歩手前で止まってますが、風に煽られて今にも海に落ちそうです。うさぎちゃんは、妖魔に首を絞められて、だんだん意識が遠のいていきます…。

        ★  ★  ★  ★  

       するとその時っ! いきなりひゅっ!と、何者かが妖魔に剣を向けます。ナンと、久々に聴くタキシード仮面のテーマをBGMに、『めちゃめちゃ肩幅の広いカッコいいエンディミオン』が、現世に登場したではありませんかっ!

       で、『めちゃめちゃ肩幅の広いカッコいいエンディミオン』(←以下、普通にエンディミオン)は、剣を振りかざして『茶色妖魔』からうさぎちゃんを奪還します。「しっかりしろっ!」。意識がもうろうとしてたうさぎちゃんが目を開けると、そこには、エンディミオン・ルックに身を包んだ地場衛の姿が…「!!…(心の声→)うそ…ホントに?…『タキシード仮面より全然カッコいい…』(←おおっ! この場合の顔の見分けはつくのかっ!)(←常識的には当たり前っちゃ当たり前だが、美少女戦士セーラームーン的には不思議っちゃ不思議だ…)(←だって、一方の地場衛は、うさぎちゃんもセーラームーンもプリンセスも、全部違う顔に見えてるんだぞ?)

       このシーンを見る限り、前世のエンディミオンは、現世のうさぎちゃんですら一目で分かるほど、顔は完全に地場衛のようです…(←って、こんなアホみたいな解説をマジメにしなければならない自分が、時々虚しくなる事もない事もないワシ…)。

       『茶色妖魔』が向かって来ると、エンディミオンはうさぎちゃんを庇いながら体を入れ替え、「うさぎっ、変身しろっ!」と叫びます。うさぎちゃんは黙ってうなずくと、「ムーンプリズムパワ〜、メーイク・アップ!!」と変身します

       で、セーラームーンは、エンディミオンの後方支援をする形で身構えます。エンディミオンはしばし妖魔を牽制したあと、最後の一振りが妖魔の体をかすめたのか、セーラームーンに「今だっ!」と合図します。するとセーラームーンはうなずき、「ムーントワイラ〜ト、フラッシュ!」で、あっさり『茶色妖魔』を倒してしまいました(←めっちゃ弱いじゃん…)。「……」

       それを見て、エンディミオンはカッコよく剣を振り回して鞘に収めます…「……」「……」ここで二人は見つめ合い、セーラームーンがゆっくりと、エンディミオンに向かって歩み寄ります…。「……」「……」「…行方不明に、なったって…」「…誰にも言わないで帰って来た…」。それを聞いてセーラームーンは、張り詰めていた気持ちが一気に緩み、思わずその場にへたり込みます…「私、ナニかあったかと思って…………ふぅ…よかった…」

       ※ これ…、エンディミオンは、「誰にも言わないで帰って来た」なんてあっさり言ってのけちゃってますけど…ナニげに『地場衛・行方不明事件』って、日英双方で思いっきり警察沙汰になっちゃってるんですよねぇ…。てコトは、仮に地場衛が飛行機に乗って日本に帰って来たのであれば、当然警察は空港で搭乗者記録を調べてるはずですから、簡単に消息がつかめる訳です。ところが、搭乗者記録にはないからこそ「ロンドンで行方不明」と騒がれてる訳です。てコトはつまり、エンディミオンは飛行機に乗る事もなく(←船じゃこんな早く来れないし)、この格好のまま、自力で海を泳いで来たか空を飛んで来たかしない限り、「ロンドンで行方不明」のまま日本には帰って来られないはずなんですな。で、その彼が、実際にどういう交通手段を使って帰って来たのかと言うと、実はナンのコトはない、四天王がいつも使ってるのと同じ、空間移動を使って帰って来てたんですな(←エンディミオンが空間移動できる事が分かるのは、Act.38〜39において)。で、おそらく地場衛は、まだエンディミオンに覚醒したばかりなので、さすがにいきなりの長距離空間移動はキツいと言うコトで、ところどころで休憩を挟みながら来たんで、このように、少々時間がかかってしまったんでしょうなぁ…。

       エンディミオンは、そんなセーラームーンの前にひざまずき、肩に手を当てて優しく見つめます…「……」「……」。で、しばし無言で見つめ合う二人でしたが、エンディミオンはふと顔を上げ、ダーク・キングダムでの一件について回想します…

       …ダーク・キングダムのゾイサイト部屋…

       …地場衛が、クンツァイトに剣を突きつけられたまま、じっと相手を見据えております…。クンツァイトは、さっと剣を引くと、一歩前に出て地場衛を上から斬りつけます(←トドメを刺す時は、必ず上からだ…)。しかし、元々ゾイサイトに心を飛ばされてここに来ていたため、この地場衛は実体ではなく、クンツァイトの剣は空を斬ります…「!…」

       地場衛は、終始微動だにする事なく、静かに、そして力強くこう言います…「決めたよ…。……もう逃げない…」

       この、「もう逃げない」と言う言い方は、要するに、今までは『逃げていた』事を意味してますから、つまり彼は、本当は、『自分が前世で一体ナニをしてしまったのか?』を、知るのが怖かったんですね。

        ★  ★  ★  ★  

       波止場にて…。

       二人は、変身を解いて、夕日の海を見つめております…。

       ナニげに地場衛の着てる服が、ダーク・キングダムに心を飛ばされてた時の服と違ってますな…(←てコトは、あれから直接日本に向かったのではないらしいですなぁ…)。で、うさぎちゃんの方も、今日は学校帰りにテレビ局に行き、スタッフ・ルックに変身した状態からセーラームーンに変身してるんですが、今は全然違う私服になってますな…(←まあ、この人の場合は、変身ケータイで服なんかどーにでもなりますからな…)。で、このうさぎちゃんが着てる上着なんですけど、これ、Act.26で、地場衛を見送りに行かず、遠くから空港を眺めながら「セラビー」を歌ってた時に来てた服と、同じデザインの色違いなんですな(←あの時のは、グレー地にピンクのラインだったのが、今回のは、ピンク地にグレーのラインで、ちょうど逆になってるみたいですなぁ…)。実は、うさぎちゃんは、この「NEXT STORY」ってブランドの服が好きらしくて、上着もシャツも、たくさん持ってるんですよね(←って、単に「衣裳協力」のメーカーさんなだけなんだけど…)。

       地場衛は、海を見つめたまま、うさぎちゃんに話しかけます…「お前は前世のこと、全部思い出したのか?」。うさぎちゃんはちょっと横を向きますが、彼の顔を見るまでには至らず、「ぜんぜん…」と、また前を向いて小さく首を横に振ります。すると地場衛は、「……『えぇ〜ナンだよ全然かよ…』(←みたいな…)。ここでうさぎちゃんは、地場衛の顔を見上げながら、「…そのぉ…」と、おずおずと地場衛を指差します。すると地場衛は、「……『ナンだよその指?』(←みたいな…)。「…は?」「…フッ…『名前ぐらい言えよ…』…少し…」「…そっか…『やっぱ私だけか…』。ここで二人は、また前を向きます。

       ここで地場衛が「少し…」と言ったのは、もちろん、まだその全てを思い出してはいないからですが、それ以上に、自分がさっきゾイサイトの部屋で思い出してしまった例の『前世の悲劇の映像』が、あまりにも惨いものだったために、それを、『とても今のうさぎには話せない』と思ったからなんですね。だから「少し…」と言うに留め、その内容を具体的に話すのを避けたんです。だから彼は最初に、「お前は前世のこと、全部思い出したのか?」と聞いたんですな。それで仮に、うさぎちゃんが『うん』と答えていたら、例の『前世の悲劇の映像』について、彼女の口から『もっと詳しい話が聞けるかも…』と考えていたはずです。

       うさぎちゃんはうつむいてしまいますが、地場衛はじっと海を見つめながら、「オレとお前の関係は、星を滅ぼす…。前世を繰り返したくない者にとって、オレたちは不吉な存在だ」。うさぎちゃんは、その言葉を、彼の横顔を見ながら聞いてましたが、また前を向き、「…うん…」とうつむきます。地場衛は、ここでうさぎちゃんを見て、「…信じるか?」と聞きます。「だって!」「オレは信じない!…そう決めた」。地場衛は、うさぎちゃんの方に体を向け、「だから帰って来たんだ……お前と一緒に証明するために…!」「!!…『えっ?! それってどう言うコト…?!』「…『って、コイツ意外と鈍いな…んじゃ』…地場衛は、照れ隠しでもするかのようにうさぎちゃんに背を向け、「……あ、…いつかのマフラー、まだあるならぁ、もらってぇ、いいか?…『コレでどーよ?』。うさぎちゃんは、それを聞いて、半泣き状態になり、「…そんなの…だめだよ…」「!…『え? オレって、もしかしてフラレちゃってんの?』「…もうすぐ…夏だし…」「…『ふ〜ぅ、ボケかよ…おどかすなよ…』…バカ、そういう問題じゃない…」「バカってナニ…」「…『え〜い、めんどくせぇっ、もう抱いてやるぅ〜っ!』(←みたいな…)。地場衛は、思わずうさぎちゃんをぎゅっと抱きしめます…

     「♪じゃ〜ん…ひとみは〜いつ〜も〜ジュ〜エル〜(ジュ〜エル〜)…♪」

       「……絶対、星なんか滅びない…!」(←おおっ! めちゃめちゃカッコいいぞ〜っ!)。地場衛がなぜ、今回エンディミオンに覚醒したのか? それは、彼が、ついに探していた「自分」を見つけたからなんですね。つまり、「他人や前世から与えられている」「地場衛」でも「エンディミオン」でもない「自分」を…。つまり、「最初から決められていただけの」運命に流されて生きるだけの自分ではない「自分」…。そしてそれは、『絶対星を滅ぼさない』事で、新しい運命を切り開く事なんだと、そう決意した訳なんですね。だからこそ、そのためにも、うさぎちゃんが必要な訳です。ここで初めて、彼はうさぎちゃんとの愛を受け入れる決心がついたんですね。今までは、前世の悲劇について知るのが怖くて「逃げ」てたけど、あの『前世の悲劇の映像』を見てしまった事が、逆に彼の腹を決めさせ、『決してアレを繰り返してはならないのだ』と、彼に自分の切り開くべき運命を教えたんです。「オレは信じない!…そう決めた」と言う言い方は、『前世でナニが起きたかも知らずに無責任にこんなコト言ってる』と言う事ではなく、知ったからこそ「信じない」「そう決めた」と言ってる訳です。

     「♪ボディに〜まとう〜〜ラ〜〜メ&チャン…♪」なんか、夕日の海を背景にして、めちゃめちゃ感動的ですなぁ…。

       そして、実はその様子を、陰からずっと覗き見していた美奈子なのでありました…「…運命は……変えられないの…?」(←なんか、セーラーV時代にも、セーラームーンの前で、ボソッとこんなコト言ってましたなぁ…)。

     「♪ここに〜あ〜るか〜ら〜つ〜よい〜ゆめ〜〜♪」

 

       美奈子は、さっきテレビ局の地下駐車場で、黒木ミオに向かって、「アナタ、まさか!?」と言ってましたから、美奈子は、黒木ミオがダーク・キングダムの手の者だとすれば、『コイツがプリンセスをロンドンに行かせようとするはずがない』と気付いたはずです。だからこうして、美奈子は、遅ればせながら、この現場に駆けつけて来られたんじゃないでしょうかね。ただし、ワシの睨んだ所では、今後の展開を考えても、美奈子がここに着いた時には、もう『茶色妖魔』は倒されたあとで、黒木ミオがダーク・キングダムの回し者だと言う決定的証拠までは掴めなかったんじゃないでしょうかね。うさぎちゃん自身も、ユウトから妖魔が離脱する瞬間は見てませんから、「ナンで妖魔がっ?!」ってな感じで、黒木ミオの素性には気付き損なってますからね。その代わり美奈子は、遅れて来たお陰と言っちゃ皮肉ですが、この二人の会話は、全て聞く事ができちゃったんじゃないでしょうか?

       Act.7のセーラーV時代は、まだ、前世の悲劇については自分しか知らず、当のセーラームーンとタキシード仮面は、何も知らずに、お互い無自覚のまま接近し合っていたんですよね。で、セーラームーンに忠告したにも関わらず、「タキシード仮面に近付かないなんて、無理だよっ!…どうしてか分からないけど……私…たぶん……」と言われてしまい、それに対して、「運命は…変えられないのね…」とつぶやいてたんですね。そして今やこの二人は、それぞれプリンセスとエンディミオンに覚醒し、前世の悲劇を承知の上で、こうして、ついに両思いまで成就させてしまった訳です。これでは益々歯止めが利かなくなってしまいますから、美奈子の心中も、察するに余りありますなぁ…。

        ★  ★  ★  ★  

       次回は、亜美ちゃんママとレイちゃんパパだっ!

        ★  ★  ★  ★  

       セーラームーン:うさぎちゃん(沢井美優さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(沢井美優さん編)▼】

       マーキュリー:亜美ちゃん(浜千咲(現・泉里香)さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(浜千咲(現・泉里香)さん編)▼】

       マーズ:レイちゃん(北川景子さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(北川景子さん編)▼】

       ジュピター:まこちゃん(安座間美優さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(安座間美優さん編)▼】

       ヴィーナス:美奈子(小松彩夏さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(小松彩夏さん編)▼】

       ぬいぐるみルナ(声・潘 恵子さん):人型ルナ(小池里奈さん):「」『』【キャスト関連商品リスト(小池里奈さん編)▼】

       アルテミィ〜ス(声・山口勝平さん):「」。『』。

       その他:「」『』

[2009年5月22日(金)初稿 トモロー]


Act.33:亜美とレイの親子物語・前編

 

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     今回レビューしたAct.32は、「美少女戦士セーラームーン DVD 第8巻」(バンダイビジュアル)に収録されております(↓)

 

DVD第8巻 作品本編(4話収録)

 

Act.29 Act.30 Act.31 Act.32 

毎回映像特典(11分)

 

「セーラームーン」におしおきよ 沢井美優小松彩夏A

Act.32 ゲストキャスト

 

黒木ミオ:

ユウト:

司会:

 

有紗

小林美江

高橋花衣

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